眼底写真のみかた
2013.02.26 網膜
今日の午後は手術を行ったのですが、手術の最中に地震がきてびっくりしました。顕微鏡で目を見ていたので、その分揺れも大きく感じました。幸い、小山市は震度2だったので、大したことはありませんでした。先日一度停電を経験しているので、手術室の無停電装置がきちんと作動することは確認済みです。停電しても手術中の症例は余裕をもって手術てきそうでした。
本日は翼状片1件、白内障5件、すべて問題なく終わりました。
眼底写真のみかた
今後眼底の病気についても解説をしたいと思いますが、その前に眼底写真について解説をしたいと思います。眼底写真は目の中を撮影したものですが、大体下の図で赤い四角の中あたりが写っています。
眼球は3つの層から出来ています。一番内側の白い層は「網膜(もうまく)」といって、カメラでいうフィルムの役割をします。その内側は「脈絡膜(みゃくらくまく)」といって、やや薄ぐろい色をしています。とても血管が豊富で、網膜に栄養を送る役割や、目の中を暗くする役割があります。一番外側は「強膜(きょうまく)」といって、とても硬くできているので、目を形作る役割をしています。
眼底写真を見てみると、全体的にオレンジ色に見えています。本当は網膜が一番手前にあるはずなのですが、半透明なのでその奥にある脈絡膜の色が見えているのです。
網膜剥離という病気の写真を見ると網膜の存在が一番分かりやすいと思います。 下の方でひらひらした網膜が見えます。これを見ると、網膜が半透明であることが分かります。
次に、眼底写真の細かい部分を順に説明します。
赤の矢印は視神経乳頭と言って、網膜の神経や血管の出入りしています。
青色の矢印の部分は、周囲よりやや色が濃くなっていますが、ここは「黄斑」という大事な部分です。網膜の中で一番神経が密で、この部分がやられると視力ががくっと下がります。
網膜の血管のうち、細い方(紫の矢印)は網膜動脈、太い方(緑の矢印)が網膜静脈です。
来週は網膜の血管が詰まる病気、網膜静脈閉塞症について説明したいと思います。
白内障は2度生じる?後発白内障について
2013.02.21 白内障
外来をやっていて年に1-2回位患者さんから「先生!白内障の手術をもう一回やってよ!」と言われることがあります。白内障の手術というのは、濁った水晶体を取り出す手術なので、2回取り出すことは残念ながらできません。白内障手術で目の中に挿入した眼内レンズも50年位はもつようなので、滅多なことでは交換しません。恐らく、「白内障手術後の明るくなった体験が忘れられない」から、もう一度体験したいという事なんでしょうね。
ところが、白内障手術で濁った水晶体を取り出したはずなのに、手術後にまた白内障になることがあります。今回はそのお話です。
折角白内障手術をして見えるようになっても、しばらくしてからまた白内障のようになったようなかすみが出てくることがあります。眼内レンズ自体は綺麗なのですが、レンズの表面に濁りが付着することがあります。これを後発白内障といいます。
青い部分は水晶体嚢といって、もともと水晶体を覆っていた透明な膜です。黄色いのは眼内レンズです。
水晶体嚢の裏側には、水晶体の細胞(水晶体上皮細胞)がくっついているのですが、白内障手術で水晶体を取り除いても、水晶体上皮細胞は全部は取り除けません。ごく一部に残った細胞は、手術後に少しずつ増殖をし始めます。あまりに細胞が増殖すると、水晶体嚢に濁りをきたすことになります。
これが後発白内障の写真です。人工のレンズの奥にぷつぷつとした細胞が見えると思います。これのせいで視力がぐっと落ちてしまうことがあります。
水晶体嚢にピントを合わせてこのレーザーをうつと、眼内レンズを傷つけずに水晶体嚢だけ弾くことができます。
眼内レンズの中心部分だけ水晶体嚢を弾いて切開します。この大きさでも通常の瞳孔より大きいので、よく見えるようになります。眼内レンズよりも大きく水晶体嚢を切り開いてしまうと、眼内レンズの位置がずれてしまうので、一般的にはこれくらいの大きさで切開します。
当院では、ellex社のヤグレーザーを使っています。レーザーが眼内レンズにあたると小さな傷がついてしまうことがあるのですが、この会社のレーザーは、とてもよくできているので、レンズをほとんど傷つけずに水晶体嚢を綺麗にすることができます。
ステロイド剤による緑内障
2013.02.18 緑内障
先週は月曜日が祝日だったため、2週ぶりの手術でした。
本日は白内障手術を7件行いました。すべて無事に終わりました。
当院スタッフの2人目がオルソケラトロジーをしていますが、睡眠時間が短いせいで近視矯正効果が出るのに時間がかかっているようです。通常1週間で効果が出るようですが、何日くらいかかるでしょうか?
ステロイド剤による緑内障
今回は特殊な緑内障の一つであるステロイド緑内障について説明したいと思います。
ステロイドは眼科だけではなく、内科・皮膚科・その他ほとんど全ての科で頻繁に使われている薬です。眼科では手術後の炎症反応を抑えたり、アレルギーを抑えたりするために点眼薬を処方しす。とても効果が高い薬である反面、副作用が時々問題になります。
ステロイドの目に対する副作用は主に①眼圧上昇から緑内障になる、②白内障、の2つです。点眼薬で白内障になることは殆どありませんが、内服薬を長期に渡って内服している方の場合は白内障が若いうちに生じます。
ステロイドは房水の出口を狭くしてしまうために眼圧が上昇します。特に若い方は眼圧上昇しやすいと言われています。そのため、「若くて、ステロイドの点眼を眼圧検査なしで長期間続けていた人が、気がついたときには進行した緑内障になっていた」という話を聞いたことがあります。
ステロイドは点眼だけでなく、内服もありますし、盲点になりやすいですが皮膚科で処方される軟膏にも入っていることがあります。例え軟膏でも、体内に染み込んで眼圧を上げることがあると報告されているので要注意です。また、ステロイドをはじめてから数年経ってから眼圧が上がることもあるので、継続的な眼圧計測は必要です。
手術を受けたあとで注意すること
2013.02.15 白内障
本日は未明から午前9時すぎまで当院が入っているビル全体で電気設備点検のための停電がありました。当院は電子カルテが入っているので、停電回復後にスムーズに起動できるかが心配でした。
9時台の予約を止めていたことに加えて、当院スタッフがとても頑張ったので、大きな混乱なく診療開始できたと思います。
朝の暖房の入り方も遅くなったので、寒くて凍えてしまいました。
この点検は年に1回あるようなので、来年はもう少し早く停電が終わるようビル側にお願いしたいと思います。
手術を受けたあとで注意すること
先週お話したとおり、手術の合併症のうちで一番怖いことは細菌が目に入ることです。そのため、手術後に患者さんに守ってもらいたいことは「目の中に菌を入れない」ということです。
白内障手術で目に付ける傷の大きさは3ミリ以下でとても小さいものです。しかし、手術後の傷は「自己閉鎖創」といって糸で縫ったりせずに閉じています。糸で縫わないことで乱視の発生を抑えているのですが、その反面手術直後に目を打ったりこすったり、ギュッとつぶったりすると傷口が開く可能性があります。
白内障手術をしたあとは特に目が気になるので、手が目に行きやすくなります。人によっては目が痒くなることもあるようです。無意識に目を触らないように、当院では手術後に透明なゴーグルを終日(寝ているときも)つけてもらっております。かなり強いプラスチックで、人が乗っても折れなさそうな感じがします。
ゴーグルの場合、早期から抗生剤の点眼を開始できるので、感染症予防にも有利に働きます。また、手術日の夜から(少しぼんやりですが)物を見ることもできます。
たまに「手術後は好きなテレビを見ないで我慢しました」という方もいらっしゃいますが、物を見ることは特に問題ありません。テレビや新聞などを見ても傷が開くことはまずありません。手術当日は、目につけた傷のせいでゴロゴロすることがあります。その場合は目を開いていると目が動き続けてゴロゴロしてしまうので、寝てしまったほうが楽かもしれません。
白内障手術で一番怖い合併症:術後感染症
2013.02.07 白内障
今回角膜の形を計測する新しい器械が入りました。オルソケラトロジーという新しいコンタクトレンズを処方するときに使用します。オルソケラトロジーは角膜の形を変えることで近視をなおすコンタクトレンズです。今回の器械は角膜の形の変化を調べるソフトがついているので、オルソケラトロジーでどれだけ近視が減らせたかが分かります。
そのソフトを用いて、今度白内障術前後の角膜の形の変化を調べてみたいなと思います。
白内障手術で一番怖い合併症:術後感染症
今回は白内障手術の合併症について説明したいと思います。 白内障手術は、過去数十年でとても進歩した手術の一つだと思います。手術に必要な傷の大きさも、昔は6ミリ以上開けていたものが現在3ミリよりも少ない傷で済むようになりました。その分、安全性もかなり高くなりましたが、ゼロではありません。今回は、白内障手術の合併症のうちで、一番やっかいな感染症について説明したいと思います。 人体の中で全く細菌がいない場所がいくつかあります。骨の中や、脳などは、細菌がひとつもいないような仕組みになっています。逆に、そういう場所に対する手術などで細菌が入り込んでしまうと厄介なことになってしまいます。 細菌を退治するのは、血液中の白血球なので、血流が豊かな場所は比較的細菌に強いです。しかし、目の中は透明であることが必要な部分が多く、そのような場所には血管が存在していないので、どうしても細菌に対して弱くなってしまいます。 白内障手術のあとに目の中に細菌が入り込んで暴れる可能性は大体4000人に一人くらいだと言われています。これは、海外の報告と比較すると少ないのです。おそらく、日本の医療機関がしっかりとした手術をしているということなのだと思います。 当院でも、細菌感染を防ぐための工夫を(やや神経質と思われるくらい)沢山しています。また、患者さんに対して感染防止の指導を行ったり、スタッフに対して感染防止の指導を行ったりもしています。細菌は目に見えないので、どんなに対策をしてもやりすぎということは無いと思います。当院で手術を受けた患者さんがみんな幸せになれるように頑張りたいと思います。