白目にできる水ぶくれ(結膜嚢胞)
2013.04.22
一人は目の前で手を振っているのがやっと分かるくらい、白内障が進行していましたが、手術後に待合室のテレビを見て喜んでいました。綺麗に手術をすると、患者さんにすぐに喜んでもらえるのでこちらも嬉しいです。
白目にできる水ぶくれ(結膜嚢胞)
白目(結膜)に水ぶくれ(嚢胞)ができる病気があります。結膜には水を作る細胞があるのですが、間違えて結膜の中で水を作ってしまい、風船のように膨らんでしまったものです。
あまりに大きくなるとゴロゴロするので、処置をします。小さい針で穴を開けると、すぐにしぼむのですが、このようにして開けた穴はすぐ閉じてしまうので、また嚢胞ができてしまいます。
ですから、この嚢胞は十字に切って、しっかり開いてあげると再発がしにくくなります。
処置のあと、出血するのは仕方ありません。すぐに綺麗になっていきます。
目の中にはいろいろなものが入る②
2013.04.16
今日は白内障手術7件
霰粒腫切除術1件
すべて無事に終わりました。
ようやくスギ花粉が終わりに近づいています。気象庁の予報でも、花粉の量が「とても多い」から「やや多い」になりました。しかし、ヒノキにも反応する私にとってはまだまだ折り返し地点。辛い日々は続きます。
目の中にはいろいろなものが入る②
前回異物について書いたので、その続きです。
やはり、一番多いのは角膜鉄片です。ハンマーで金属を叩くと、小さな破片が飛び散るようです。入り方は主に2つのパターンがあります。
一つは、角膜にめり込むタイプ
人によってはとても痛いので、異物が入ってからすぐに来院する場合もあります。しかし、時にはあまり痛くないこともあるようで、入ってから数日して「ゴロゴロする」と言って来られる方もいらっしゃいます。
通常、異物には細菌が付着しているので、異物が原因で細菌性角膜炎になることがあります。ただし、植物(もしくは、植物の種)が目に入るよりも、鉄片が目に入るほうが細菌性角膜炎になる確率は低い感じがします。鉄は角膜に刺さったあと酸化するので、周囲が酸性になって殺菌作用が働くようです。ですから、鉄片異物を取る前よりも後の方が細菌性角膜炎になりやすいようです(だからといって異物を取らなくて良いわけではありません)。
もう一つは、上まぶたの裏にくっつくタイプ これはとても痛いので、すぐに来院します。 この異物のせいで、角膜の表面がかなり傷んでいます。角膜はとても敏感ですから痛いのです。異物をとると患者さんは何事もなかったかのようになります。 同じように、上瞼の裏に入りやすいのは洗顔料のスクラブです。滅多なことでスクラブは瞼の裏に入りませんが、1~2年に1人くらい、スクラブの異物を見かけます。一般的なスクラブは米ぬかから作られているので、診察するとビーズみたいな丸っこい物が見えます。大きさは上の写真の鉄片と同じくらいだと思います。中高生が朝9時に異物で来院すると、これが疑わしいですね。洗顔料を持ってきてもらうと解決できることがあります。 他にも、火山灰由来のスクラブ異物もあるようです。泥石鹸は今でも良くありますが、その一連で火山灰入りの洗顔料がある(あった?)ようです。下は、実際に販売されていた洗顔料のスクラブの顕微鏡写真です。 こんなに尖ったものが目に入ったら本当に危ない、というか痛そうです。消費者庁のHPで注意勧告がされていました。実際には見たことありませんが。一時宮崎に住んで、新燃岳の火山灰を浴びる生活をした私にとって、お金をだして火山灰を買って顔に塗る気がしれません。ああ痛そう。
目の中にはいろいろなものが入る①
2013.04.11
このところ、スギ花粉の飛散が終わってきたようですが、ヒノキにも反応する私にとってはまだまだ中間地点です。頑張ってしのぎたいと思います。
この1週間ほど、診療終了間際や、終了後に「物が目に入った」という患者さんが多く来ました。そこで、今回はこのテーマ。
目の中にはいろいろなものが入る①
外来をしていると、「目に○○が入った」という訴えで来院されることが良くあります。一番多いのが鉄片で、その次がコンタクトレンズです。ソフトコンタクトはとてもやわらかい素材でできているので、意外と簡単に破れます。通常は破れないように優しく扱わないといけないのですが、爪が当たると破れやすいようです。
上眼瞼をめくると、破れたソフトコンタクトがでてきました。
たまに、いくら探してもコンタクトが出てこないことがあります。その時は、おそらく破れたコンタクトがどこかに出て行ったのだと思います。たまに「目の裏にコンタクトが回り込んでないですか?」と言われますが、眼球結膜(白目)と眼瞼結膜(瞼の裏の粘膜)はつながっているので、突き当りがあります(青丸の部分)。それ以上奥にはいきません。
これを書いていて思い出したのですが、以前私がコンタクト診療所でバイトをしていたとき、下まぶたのつけまつげに死んだハエが乗っかっていたのを見たことがあります。診察用の顕微鏡で拡大したのを見たので、とても衝撃的でした。本人は気づいていなかったみたいです。
霰粒腫(さんりゅうしゅ)について
2013.04.09
今日は白内障手術5件
霰粒腫切除術1件
すべて無事に終わりました。
本日は後輩が見学にきました。工夫していることや、思っていることを沢山話ました。
その後家に帰ったら寒気が・・・うーん、風邪をひいたかな。明日に影響がでないように早めに寝ます。
霰粒腫(さんりゅうしゅ)について
まぶたの中にはマイボーム腺といって、油を出すところがあります。この油は涙の蒸発を防いだり、目がゴロゴロしないような潤滑剤として働きます。しかし、時にマイボーム腺が詰まることがあります。これを霰粒腫と言います。簡単に言うとニキビのようなものです。似たもので、麦粒腫というものもあります。これは別名ものもらいと言い、マイボーム腺の中で細菌が暴れたものです。
マイボーム腺の出口はまぶたの縁にあります。(上の写真の青矢印)上まぶた、下まぶたともに約20個程度存在します。
上の写真だと、白い目詰まりがあるのがわかりますね。ここがマイボーム腺の出口です。
霰粒腫は、このマイボーム腺の途中で目詰まりをおこし、なかで油がたまる(青い部分)病気です。油の量が増えると、皮膚側か、もしくは眼球側に油が出てきます。
これは皮膚側に出た場合のイラストと写真です。写真では何があるかわかりにくいですが、上まぶたの中に大豆のようなものが触れます。だんだん油の量が大きくなってくると、皮膚が薄くなったり、睫毛が抜けてきたりします。一旦霰粒腫皮膚が薄くなると元に戻りませんし、霰粒腫で睫毛が抜けると、治ったあとも生えてこないことがありますので、その時は手術の適応だと思います。
こんな風に皮膚が薄くなると、もうそろそろ手術を考えても良いかもしれません。実際に皮膚側から切開をして、中身をだしても、傷口は殆どわからない程度になります。
これが眼球側に出た場合のイラストと写真です。瞼の粘膜の奥に何か白いものがあるのがわかると思います。眼球側に霰粒腫が出たときは、瞼の裏からメスで切開するだけで、内容物がどっとでてきます。多少出血しますが、縫合や抜糸をせずに済み、美容的に影響がないのが利点です。だたし、皮膚側に霰粒腫が出来た場合は瞼の裏から切開できないこともあります。
涙腺が腫れるドライアイ(ミクリッツ症候群 Mikulicz's syndrome)
2013.04.01
本日は白内障手術4件(うち、緑内障発作後1例、成熟白内障1件、乱視矯正用眼内レンズ使用1件)
眼瞼内反症手術1件を行いました。今回は手術が少なめでしたが、とてもハードでした。
涙腺が腫れるドライアイ(ミクリッツ症候群 Mikulicz's syndrome)
今回はやや専門的な話です。一般の方には分かりにくい内容だと思います。
外来をやっているとドライアイの患者さんは山ほど来院されるのですが、あまりに重度のドライアイの場合、シェーグレン症候群という病気を疑って、血液検査をすることがあります。
今回、重度のドライアイに加えて、涙腺と唾液腺が腫脹している患者さんが来院されて、ミクリッツ症候群と診断しました。そこで、今回はミクリッツ症候群について話をしたいと思います。
ミクリッツ症候群は、重度のドライアイに涙腺腫脹が合併する疾患ですが、その原因として、悪性リンパ腫、白血病、サルコイドーシス、結核、梅毒の可能性があるようです。そのため、まずこれらの疾患を除外する必要があります。結核は最近クオンティフェロンの血液検査ができるようになったので、多少は楽に診断できるかと思いますが、検体の取り扱い(温度)が少し面倒です。これらの疾患を除外すると、ミクリクツ病と診断されます。(正確には涙腺を病理検査する必要があります)
上の写真では、眉毛のあたりが腫れていますね(D)その他にも、顎下腺(C)も腫れています。最近、ミクリクツ病はIgG4という免疫が関与していると言われています。そのため、上記の除外診断と同時にIgG4も検査すると良いと思います。
また、涙腺だけではなく、他にも内臓疾患が合併していることもある(甲状腺の異常、肝機能異常、腎疾患など)ので、全身のCTやMRIは必須です。
乾燥性角結膜炎の治療は、一般的なドライアイに準じますが、涙点プラグを行った上で複数の点眼治療を行わないと、なかなか治りにくいかもしれません。また、全身のステロイド薬が著効するようです。
もともと稀な疾患なので、きちんと知識を整理しておかないと次に活かせませんね。次回同じ患者さんが来院されることは滅多にないと思いますが、スムーズに対応できると思います。