もりや眼科

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緑内障になりやすい人(緑内障のリスクファクター)

2012.07.12

緑内障になりやすい人(緑内障のリスクファクター)

私が外来で緑内障患者を診療していて、良く聞かれることがあります。
「血圧が高いから緑内障になったのか?」
「緑内障は遺伝するのか?」
「母が緑内障なので、自分も緑内障になりやすのではないか?」
実際にこのような質問をする患者さんは、身の周りに進行した緑内障の方がいらっしゃることが多く、「自分も同じようになったらどうしよう」と強く心配していることが多いです。
このような方にはなるべく正確な情報を伝えたいところですが、実際には、どうなのでしょうか?

緑内障は多因子疾患(原因が一つではない病気)と言われています。
緑内障は眼圧が最も大きな要因であることが知られていますが、実はそれだけではありません。
視神経の血流、近視の程度、全身病(糖尿病など)、遺伝なども関係があると言われています。

眼圧についてですが、眼圧が21mmHg以上になると、緑内障になりやすくなると言われています。
大まかに言うと、下の通りになります
・眼圧が24mmHg以上の人は、16mmHg以下の人と比べて10倍以上緑内障になりやすい
・眼圧が25mmHg以上の人は、20mmHg以下の人と比べて5倍以上緑内障になりやすい
これらの結果は海外の報告なのですが、日本では眼圧が21mmHg以下で緑内障の有病率が多い事がわかっています。

眼圧が21mmHg以下で緑内障になった場合、「正常眼圧緑内障」と言われていますが、その場合でも眼圧を下げたほうが緑内障が進行しにくいことがわかっています。
・正常眼圧緑内障は、眼圧を下げないでいると、5年間で60%の患者は緑内障が悪化する。
・正常眼圧緑内障の場合、もとの眼圧より30%眼圧を下げると、5年間で80%の患者は緑内障が進行しない。
結局のところ、はじめの眼圧が高かろうが低かろうが、眼圧を下げたほうが良いということになります。
眼圧を下げる方法については、また別で書こうと思います。

遺伝については、特殊なタイプの緑内障以外であれば、遺伝の影響はそう強くない印象です。
・双子の場合、一方が緑内障を発症していると、もう一人にも10%の割合で緑内障
・緑内障の患者は16%の割合で家族内に緑内障がいる
外来では、家族内に2人以上の緑内障患者がいなければ、そんなに心配しすぎなくても良いですよ。と言っています。
たまに緑内障をチェックする事さえ怠らなければ、過度に心配することもないと思います。

血圧に関しては、なんとなく血圧が高い人は眼圧が高くなりそうなイメージですが、実際はそうではありません。
目の中の水は「房水」と呼ばれていますが、これは「血液の透明な成分が目の中に入ってくる」訳ではなく、
目の中の細胞(毛様体無色素上皮)が血液をもとに作り上げたものです。
ですから、血圧が高くなったからと言って、房水が沢山作られるというわけではありません。
血圧が高くても、逆に低くても緑内障になりやすくなるという報告はありますが、そんなに強くは関係していません。ですから、緑内障の患者さんに「緑内障ですから血圧を下げましょう」と指導することはありません。

その他には、高齢、女性、偏頭痛があると緑内障になりやすいと言われています。
当てはまる人は、一度緑内障の検査をしても良いかもしれませんね。

ものが見える仕組み(緑内障での視野の欠け方)

2012.07.10


ものが見える仕組み(緑内障での視野の欠け方)


私たち眼科医は、患者さんに目の仕組みを説明するとき、良くカメラに例えます。目の中には網膜(もうまく)と言って、カメラのフィルムに相当するものがあります。(下の写真の黒矢印の部分です。)


網膜
目に入った光が網膜に当たることで光を感じることが出来ます。下の図のように、下から入ってきた光は、上の方の網膜に当たることになります。ですから、視野検査で下の方が見にくい、という結果が出た場合、網膜の上の方が傷んでいるということになります。

写真 12-07-10 19 34 56


網膜は文字通り「膜」ですが、実は神経線維の集まりです。網膜の神経は、下の図の黄色の矢印のように視神経に向かって伸びています。網膜にある動脈(赤色)、静脈(青色)とほぼ同じように神経線維が伸びています。

写真 12-07-10 22 16 53


下の図は、緑内障の人の視野検査の結果です。緑内障の視野は、このように水平線でくっきりと境界線ができることがあるのが特徴です。網膜神経線維は視神経よりも上と下で別々の神経ですからこのような境界線が生じます。水平線より上側の視野が欠けた場合、網膜の下側(図の黒で囲った部分)が障害されているということになります。



 

 緑内障の視野緑内障の視野1

 

8020運動と緑内障(視神経の寿命について)

2012.07.06

内覧会や開業のイベントが過ぎて、院内もだんだんと落ち着いてきました。スタッフも電子カルテにだんだん慣れてきて、受付時間がみるみる短くなってきています。
再来週には手術も始まるので、念入りに準備しています。白内障の手術機械は大学と同じで慣れているものなので、以前と同じように手術が出来るのが嬉しいです。

8020運動と緑内障(視神経の寿命について)

先日妻と歯医者に行ったところ、院長先生に8020運動について伺いました。
現在日本では80歳で平均7本程度の歯しか残っていないそうです。
年齢ごとの歯の状態シミュレーションを見せていただきましたが、年を重ねるごとにみるみる歯が減っていく様子が衝撃的でした。

インターネットで調べましたが、40代あたりから徐々に歯が減っていくのですね。

眼科医の私としては、このグラフを見ると緑内障に於ける視神経の数を連想します。40代というと眼科的には20人にひとり緑内障がいる、という年齢です。緑内障の場合、目の神経線維の本数が減少しているはずなのですが、神経繊維の本数は数えることができません。
そこで、緑内障診療では視野の広さを計測することで、神経線維が傷んでいるかを調べます。緑内障の視野減少率
① 緑内障の治療をしなかった場合
② 緑内障の治療開始が遅かった場合
③ 早くから緑内障の治療をした場合

歯の本数の場合、40代位から減少しているわけですが、目の神経線維が何歳くらいから減っているかはよくわかりません。というのも、神経がある程度ダメージを受けないと視野が減少しないからです。
緑内障の場合、徐々に神経線維が傷むのですが、昔は人の寿命が短かったので生活に支障が出ないまま寿命が来ていました。しかし、現在では人の寿命がかなり長くなったため、生活に支障のあるレベルまで神経線維が傷む人が増えた、ということです。

緑内障は治療をしても神経が再生することはありません。そのため、緑内障の診療はいかにして神経の寿命を延ばすか、ということになります。点眼などに寄って緑内障の悪化が緩やかになったとしても、治療の開始が遅ければ②のように結局は生活に支障がでることになります。

緑内障治療のゴールは「目の状態を生活に支障のないままに保って人生を全うすること」です。そのため、③のように早期に治療を開始することで、目に不自由のない一生を送ることができるかもしれません。

40代になったら緑内障のチェックをしてみませんか?





































緑内障はなんで気がつかないの?(マリオット盲点と虚性暗点)

2012.07.04

7月2日 もりや眼科が開業いたしました。
この2日間は大盛況で、視力計や視野計がほぼフル稼働でした。

この2日診療していて思ったことが、緑内障患者の割合が多いことです。
日本人での失明原因1位の疾患なので、多くて当然なのですが、それにしても多いなと感じました。

緑内障診療は、患者さんと情報を共有することが難しいと感じることが多いです。
それなので、しばらくは緑内障について、分かりやすく書いていきたいと思います。

緑内障はなんで気がつかないの?(マリオット盲点と虚性暗点)

下の写真は視野検査の結果です。
右目の視野ですが、左上が欠けています。
視野の4分の1以上が欠けているにもかかわらず、この患者さんは見えにくいことに気がつきませんでした。

中期緑内障



視野検査の結果では見えにくいところが黒く表示されるので、「緑内障になったら視野の中で暗っぽい部分が出るに違いない」と思っている人もいるのですが、実際にはそんなことはありません。
緑内障のように、「視野が欠けていても気がつかない」ということを「虚性暗点」といいます。(暗点=見えない部分)
反対に、網膜剥離という病気では「緞帳が下から上に上がってくるように見えない部分が広がってきた」と訴えて病院を受診する方もいらっしゃるのですが、これを「実性暗点」といいます。

実は、緑内障でない健康な人でも虚性暗点は自覚することが出来ます。
「マリオット盲点」と言って、人間は誰しも見えない部分を持っています。

ま盲点

青の矢印の部分がそうなのですが、両眼とも中心(目を向けている方向)よりも外側15度に盲点があります。
これは、視神経が目の中に出入りする部分(視神経乳頭)に一致します。(下写真の矢印)

視神経乳頭

マリオット盲点の検出方法は、一般的には下の図のようなものを用いて行います。
下の図をクリックすると丸と三角が表示されると思います。
ま盲点検出
右眼で赤いマルを見ながら画面に近づいたり遠ざかったりしてみると、ある場所で緑の三角が見えなくなります。
以前看護学科で授業をしたときにこれをやったところ、皆さんびっくりしていました。
緑内障の患者さんにこれをやると、やはり皆さんびっくりします。
「虚性暗点を理解すること」は緑内障診療の第1歩かもしれませんね。

内覧会をしました

2012.06.30

本日内覧会を実施しました。130名の方に来ていただき、盛況のうちに会を終えることができました。
これから当ブログで目の病気について定期的に書いていこうと思っています。目の病気は一般の方には分かりにくいので、極力分かりやすいよう記事を書きます。
まずは7月2日の開院に向けて、しっかりと準備しようと思います。

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