緑内障はなんで気がつかないの?(マリオット盲点と虚性暗点)
2012.07.04 緑内障
7月2日 もりや眼科が開業いたしました。この2日間は大盛況で、視力計や視野計がほぼフル稼働でした。
この2日診療していて思ったことが、緑内障患者の割合が多いことです。
日本人での失明原因1位の疾患なので、多くて当然なのですが、それにしても多いなと感じました。
緑内障診療は、患者さんと情報を共有することが難しいと感じることが多いです。
それなので、しばらくは緑内障について、分かりやすく書いていきたいと思います。
緑内障はなんで気がつかないの?(マリオット盲点と虚性暗点)
下の写真は視野検査の結果です。
右目の視野ですが、左上が欠けています。
視野の4分の1以上が欠けているにもかかわらず、この患者さんは見えにくいことに気がつきませんでした。
視野検査の結果では見えにくいところが黒く表示されるので、「緑内障になったら視野の中で暗っぽい部分が出るに違いない」と思っている人もいるのですが、実際にはそんなことはありません。
緑内障のように、「視野が欠けていても気がつかない」ということを「虚性暗点」といいます。(暗点=見えない部分)
反対に、網膜剥離という病気では「緞帳が下から上に上がってくるように見えない部分が広がってきた」と訴えて病院を受診する方もいらっしゃるのですが、これを「実性暗点」といいます。
実は、緑内障でない健康な人でも虚性暗点は自覚することが出来ます。
「マリオット盲点」と言って、人間は誰しも見えない部分を持っています。
青の矢印の部分がそうなのですが、両眼とも中心(目を向けている方向)よりも外側15度に盲点があります。
これは、視神経が目の中に出入りする部分(視神経乳頭)に一致します。(下写真の矢印)
マリオット盲点の検出方法は、一般的には下の図のようなものを用いて行います。
下の図をクリックすると丸と三角が表示されると思います。
右眼で赤いマルを見ながら画面に近づいたり遠ざかったりしてみると、ある場所で緑の三角が見えなくなります。
以前看護学科で授業をしたときにこれをやったところ、皆さんびっくりしていました。
緑内障の患者さんにこれをやると、やはり皆さんびっくりします。
「虚性暗点を理解すること」は緑内障診療の第1歩かもしれませんね。