糖尿病網膜症で網膜に起きる変化(点状出血、軟性白斑)
2013.06.10 網膜
本日は、白内障手術 9件を行いました。
無事に手術を終えました。
糖尿病網膜症で網膜に起きる変化(点状出血、軟性白斑)
糖尿病になると、目の中の血流が悪くなります。そうすると、網膜の血管がだんだん傷んできます。
糖尿病網膜症になって、初めに生じる網膜の変化は大体の場合点状出血です。これは、網膜の血管が傷んだことにより、少量の血液が漏れ出るために生じます。ですから、これが1つでもあると、「あなたは糖尿病網膜症です」と診断されます。糖尿病がある程度悪くないと生じない変化なのです。
赤い矢印の部分が点状出血です。文字通り、点のような出血を認めます。
もっともっと網膜の血流が悪くなると、網膜が一部白っぽくなってきます。これは「今現在この部分に血液が足りてないですよ」というサインです。糖尿病網膜症がこれから悪くなっていきますよ、という事なのでレーザー治療が必要になります。
この白っぽいのが軟性白斑です。腕を強く縛ると、虚血になって白くなっていくと思いますが、それと同じようなものだと思うと分かりやすいと思います。
これは先ほどと同じ方、同じ部分で、レーザー治療をした後の写真です。赤矢印の部分の軟性白斑が無くなっています。緑の部分に少しだけ軟性白斑があります。
もう少し後の写真です。前回あった、小さな軟性白斑もなくなりました。
糖尿病網膜症という病気
2013.06.03 網膜
本日は
白内障手術 7件
すべて無事に終わりました。
糖尿病網膜症という病気
糖尿病は緑内障に次いで現在失明の原因2位の病気で、毎年3千人が失明しています。また、糖尿病網膜症による失明者は年々増加しており、眼科医にとって悩ましい疾患の一つです。糖尿病網膜症は、糖尿病の重症度とともに、糖尿病である期間が長いと生じやすい事が知られています。
糖尿病網膜症、高血圧、動脈硬化などで網膜の血管が詰まると、以下が起こります。
① 血液の流れが悪くなり、網膜に小さな出血が出現します
② 血液が流れていない部分(無血管野)に、非常に出血しやすい新生血管ができます
③ 網膜に浮腫がおこり、視力が急激に低下します
④ 新生血管から出血し、視力が急激に低下します
⑤ 網膜にかさぶたのような膜(増殖膜)ができます
⑥ 増殖膜が網膜を引き剥がします(網膜剥離)
⑦ 最終的には失明に至ります
右の眼底写真は、正常な眼底写真です。左の眼底写真は糖尿病網膜症がかなり進行した眼底写真です。進行した糖尿病網膜症に特有な新生血管、硝子体出血、増殖膜が生じています。こうなってしまうと硝子体手術が必要になりますし、視力がなかなか改善しないことになってしまいます。
網膜の血管が詰まる病気(網膜静脈閉塞症)
2013.03.05 網膜
本日は白内障手術6件
翼状片1件
抗VEGF抗体硝子体注射1件
すべて無事に終わりました。
網膜の血管が詰まる病気(網膜静脈閉塞症)
先週は、網膜と、網膜に走る血管がどのようなものかを説明しました。今回は、網膜の血管が詰まってしまう病気、網膜静脈閉塞症について説明したいと思います。
網膜の血管は、人間の体にある血管のうち、外から直接観察できる唯一の血管です。そのため、眼底検査をすると、動脈硬化の程度がある程度分かります。この網膜の血管が詰まってしまうと、網膜は死んでしまうため、物が見えなくなってしまいます。
これは網膜の静脈の一部が詰まってしまった写真で、網膜静脈分枝閉塞症(もうまくじょうみゃくぶんしけいそくしょう)と言います。網膜の静脈が詰まると、心臓に帰るはずの血液が行き場を失って網膜に溜まります。そのため、網膜に血が溜まったように見えるのです。
血管が詰まった部分では、VEGFというホルモンが産生されます。これが厄介者で、周囲の網膜をむくませたり、新生血管という悪い血管を作り出して出血を引き起こしたり(硝子体出血)、悪性の緑内障(新生血管緑内障)を引き起こします。
網膜の浮腫が黄斑(色が濃い部分)に達すると、急激に視力が低下します。
これは、上のBRVOの方のOCTです。黄斑がむくんでいることが分かります(赤矢印)。そのため、厚みマップ(左上の図)では、赤~白色になっています。右上を見ると、中心の厚みは467μmでした。血管の閉塞と浮腫によって視力は0.2まで下がっていました。
初診時にすぐに抗VEGF抗体(VEGFを減らして網膜の浮腫を減らす薬)を注射しました。浮腫に対する治療は時間との勝負で、時間が経ってしまうとあまり効果がありません。
上のOCTで赤矢印の部分のむくみはかなり減っています。また、厚みマップでは、中心の赤~白の部分が大分減っていることも分かります。中心の網膜厚も314μmで、大分減りました。視力は0.7まで上昇して、とても喜んでいました。
抗VEGF抗体の注射の効果は一時的なことも多く、何度か注射が必要になることもよくあります。また、浮腫を改善しても、血流が途絶えたことによるダメージは残るので、完全に視力が戻るわけではありません。新生血管を防止するためには、出血が引いた後でレーザー治療が必要になります。
眼底写真のみかた
2013.02.26 網膜
今日の午後は手術を行ったのですが、手術の最中に地震がきてびっくりしました。顕微鏡で目を見ていたので、その分揺れも大きく感じました。幸い、小山市は震度2だったので、大したことはありませんでした。先日一度停電を経験しているので、手術室の無停電装置がきちんと作動することは確認済みです。停電しても手術中の症例は余裕をもって手術てきそうでした。
本日は翼状片1件、白内障5件、すべて問題なく終わりました。
眼底写真のみかた
今後眼底の病気についても解説をしたいと思いますが、その前に眼底写真について解説をしたいと思います。眼底写真は目の中を撮影したものですが、大体下の図で赤い四角の中あたりが写っています。
眼球は3つの層から出来ています。一番内側の白い層は「網膜(もうまく)」といって、カメラでいうフィルムの役割をします。その内側は「脈絡膜(みゃくらくまく)」といって、やや薄ぐろい色をしています。とても血管が豊富で、網膜に栄養を送る役割や、目の中を暗くする役割があります。一番外側は「強膜(きょうまく)」といって、とても硬くできているので、目を形作る役割をしています。
眼底写真を見てみると、全体的にオレンジ色に見えています。本当は網膜が一番手前にあるはずなのですが、半透明なのでその奥にある脈絡膜の色が見えているのです。
網膜剥離という病気の写真を見ると網膜の存在が一番分かりやすいと思います。 下の方でひらひらした網膜が見えます。これを見ると、網膜が半透明であることが分かります。
次に、眼底写真の細かい部分を順に説明します。
赤の矢印は視神経乳頭と言って、網膜の神経や血管の出入りしています。
青色の矢印の部分は、周囲よりやや色が濃くなっていますが、ここは「黄斑」という大事な部分です。網膜の中で一番神経が密で、この部分がやられると視力ががくっと下がります。
網膜の血管のうち、細い方(紫の矢印)は網膜動脈、太い方(緑の矢印)が網膜静脈です。
来週は網膜の血管が詰まる病気、網膜静脈閉塞症について説明したいと思います。