いろいろな飛蚊症
2015.03.30 網膜
本日は白内障手術10件(うち入院2件)
霰粒腫切開術1件
無事に終わりました。
いろいろな飛蚊症
飛蚊症というのは、視界に糸くずや黒い影のようなものが見えて、目を動かすのにつられて動き回るように感じる症状を言います。蚊が飛んで見えるので飛蚊症という名前がついています。
殆どの場合は後部硝子体剥離という状態で、年齢とともに誰でも出てくるものです。
稀ですが、網膜剥離の場合もあるため、飛蚊症が急に増えた場合は眼底検査を行った方が良いと思います。
これも稀なのですが、後部硝子体剥離の時に網膜の血管を傷つけて出血してしまうことがあります。特に、視神経の部分は硝子体との接着が強いので、そのぶん剥がれるときに強く力が加わります。
写真の矢印の部分に出血が見えます。出血は少量なので、時間が経つとだんだん吸収されます。出血時に網膜剥離が生じることもあるので、眼底検査をしっかり行うことは大事です。
黄斑前膜、黄斑円孔はいつ手術をしたらよいのか?
2015.03.02 網膜
白内障手術 10件(乱視用レンズ6件、入院1名)
全て無事におわりました。
黄斑前膜、黄斑円孔はいつ手術をしたらよいのか?
手術が適応になる病気というのは沢山ありますが、手術適応が比較的明確なものもあれば、そうでないものもあります。たとえば、網膜剥離は発症したら即手術です。それに対して白内障は厳密にいうとかなり若いころから生じていて、徐々に進行していくものですから手術適応があいまいです。車を運転する人であれば、矯正視力が0.7を下回る前に手術する必要がありますが、そうでない人はもっと視力が下がっても日常生活に不自由しないかもしれません。
黄斑前膜とは、黄斑(カメラでいうフィルムの部分)に膜がはる病気です。これが原因で視力がさがったり歪んで見えたり(変視症)することがあります。また、進行すると黄斑に穴が空くことがあります(黄斑円孔)。
黄斑前膜がかなり進行していて変視症(ゆがみ)が生じていたり、矯正視力が下がっていれば手術を進めやすいのですが、これらの程度が軽い人は「手術した方が良いかもしれないけど、しないという選択肢もあります」とか、「手術はあまり勧めませんが、希望があればできます」という事もあります。
1年ほどまえに来院した方で、「歪んで見える」と訴えた方がいらっしゃいました。OCTで黄斑の断面を撮影してみると、このような感じに。
少し膜がはっているという程度でしょうか?黄斑前膜のようです。
しかし、断面を変えてみるとこのような場所が。もう少しで黄斑円孔になりそうになっています。
所見としては手術適応なのですが、矯正視力が1.2、変視症も少しということで症状が軽いため、「手術した方が良いと思うけど、どうしましょうか?」と相談してみました。リスクやメリットについて良く説明したところ、経過を観察することになりました。
本当はマメに診ようと思っていたのですが、次回来院したのが1年後。
この時は、以前よりも見えにくくなっているようでした。矯正視力も0.7と低下。アムスラー検査を行うと図のように中心部分が見えにくくなっているようでした。
また、OCTを撮影してみると、黄斑円孔が完成していました。これは見えにくそうです。
手術を行って、一応視力は1.0まで上がっていますが、やはり中心部分の見えにくさと歪みが残っているようです。
この方は1年の間に進行してしまいましたが、一方であまり病状が進行しない人もいます。手術をしないという選択肢を選んだ場合、定期的に診察を受けるのが大事ですね。
糖尿病患者の内科外来自己中断と糖尿病網膜症
2015.02.10 網膜
本日は白内障手術10件(うち、入院1件、乱視用レンズ3件、乱視多焦点1件)
無事に終わりました。
糖尿病患者の内科外来自己中断と糖尿病網膜症
糖尿病は現在失明の原因2位の病気なので、眼科にとってはとても重要な病気です。
糖尿病の方は基本的に定期検査が必要です。しかし、いくら糖尿病網膜症があったとしても、視力が下がらないと自分が重症かどうかが理解しにくく、そのため、定期検査を辞めてしまう人がいます。糖尿病が悪い人ほど、定期検査を辞める人が多い印象です。外来受診を辞めたとしても糖尿病網膜症が良くなるわけではなく、いずれ悪くなることが多いです。しかし、糖尿病で視力が下がってしまうと、そこからは医師・患者ともにとても大変です。
下の写真の方はいずれも内科・眼科の診察を自己中断したものの、視力が低下したため当院を受診した方です。上の写真は眼球内に出血がたまったもので、下の方に赤い液体がたまって水平面を作っています。下の写真2つは、何が写っているのかが分かりにくいと思いますが、眼球内に出血があるために、眼底写真がはっきり撮れない状態です。こんなにひどくなる前に何とかならなかったのか、と思います。これから治療を始めるのですが、できるだけ視機能を残していきたいところです。
視力のあるうちは、糖尿病網膜症の外来受診の重要性をいくら説明してもなかなか分かってくれないことが良くあります。そんな時にはお手紙を書いて送ったりもしています。下の写真がそれなのですが、プライバシーもあるのでぼやかしてあります。こうすると家族にも読んでもらえて、受診率が高くなります。それでも100%とはいかないのが難しいところです。
黄斑前膜に対する硝子体手術
2014.12.23 網膜
本日は白内障手術10件行いました。
皆さん無事に終わりました。これで今年の手術は終了です。
黄斑前膜に対する硝子体手術
黄斑前膜(おうはんぜんまく)とは、網膜の中心部分である黄斑に膜が張ってしまう病気です。黄斑に出来た膜は、時間とともに縮む性質があるため、黄斑にシワが出来てしまいます。そうすると、変視症(ゆがんで見える)や視力低下の原因になります。
上は正常の黄斑のOCT画像です。黄斑の中心は、矢印のようにくぼんでいます。
上は黄斑前膜のOCT画像です。赤い矢印の部分に膜が一枚ありますが、これが黄斑前膜です。黄斑前膜によって、その下にある黄斑にシワができています。また、黄斑の中心にあるはずのくぼみも無くなっています。この方は、この病気によって矯正視力が0.6まで下がっていました。
上は硝子体手術を行った後の写真です。黄斑の表面にあった黄斑前膜が完全になくなっています。視力は無事に1.0まで回復しましたが、黄斑のくぼみはまだできていません。黄斑前膜によって一旦網膜にシワが出来てしまうと、手術を行って黄斑前膜を綺麗にはがしてもシワが完全に伸びないこともあります。
手術をしてどのくらいの視力になるのか、手術の前に良く説明しなくてはなりません。
・黄斑前膜によるシワが多い
・黄斑前膜になっていた期間が長い
・黄斑前膜によって視力が落ちている
このような条件があると、視力が回復しにくい傾向にあるようです。黄斑前膜になってから早い時期(半年位)だと視力が上がりやすいように思えます。しかし、黄斑前膜は放置しておくとだんだんシワが増えて視力をさらに下げることがあるので、黄斑前膜になって時間が経っていて視力が上がりにくいと予想されていても手術を行うこともあります。
黄斑前膜の症状の一つは変視症なので、歪み方を調べるためにアムスラーチャートを用います。
このような格子模様を診てもらうと、どこがどのくらい歪むのかが分かります。片目ずつ、格子の中心の点を見てもらい、どこが歪むかを記していきます。
先ほどの人は視力が1.0まで回復しましたが、上の図のとおり歪みは少し残っています(術後2か月)。術後半年から1年くらいかけてゆっくりと歪みが減ることがあります。
知らない間に進行する糖尿病網膜症
2014.10.20 網膜
先週土曜日と本日で
白内障手術32件
硝子体手術12件
緑内障手術(エクスプレス)1件
眼瞼腫瘍切除術1件
皆さん無事に終わりました。糖尿病網膜症の患者さんが多くて大変です。
知らない間に進行する糖尿病網膜症
一口に糖尿病網膜症といっても、派手に出血するものもあれば、一見あまり悪く見えないけどとても重症というものまで様々です。
このように、軟性白斑が多発していると「これは危ない」と分かりやすいです。そのため、診察してすぐに「レーザー治療をしましょう」という事ができます。しかし、糖尿病網膜症の中にはぱっと見分かりにくい所見があります。それが「新生血管」です。通常見えている血管よりもずっと小さいので分かりにくいのですが、実はとても重要な血管です。網膜の虚血(血液不足)を良く反映するため、治療方針の判断を左右する重要な所見です。
ぱっと見で点状出血しか無かったからか、他院では追加治療されなかった症例です。しかし、造影検査をしてみると・・・・
造影剤を入れてすぐの写真です。良く見るとチリチリした血管だらけです。これらはすべて新生血管です。
造影剤をいれて5分たった写真です。本来暗いはずの黄斑付近から造影剤が漏れ出してボヤボヤしています。網膜がかなり血液不足の状態になっているという事なので、レーザー治療を追加しました。
こういった症例では、硝子体出血や新生血管緑内障などのリスクが高くなっている状態なので、うまく落ち着くと良いですね。