網膜静脈分岐閉塞症による黄斑浮腫
2016.02.09 網膜
本日は白内障手術10件、
帯状角膜変性症1件
無事に終わりました。
網膜静脈分岐閉塞症による黄斑浮腫
網膜静脈分岐閉塞症(BRVO)の患者さん、当院には月に2人位来ます。突然見えなくなるせいか、みなさんびっくりしてしまうようですね。そのため、良く説明してから治療を行うのですが、混乱してしまうせいか説明が頭に入っていかない人が多い印象です。中には私から見てとんでもない治療に走ってしまう人もいます・・
時々アバスチンによる治療を望んでくる人がいます。ネットで勧められているようですが、今となってはもうお勧めではありません。クリニックによっては、アバスチンを10回以上している方もいるようです。ルセンティスやアイリーアが開発される前にはやったりしていたのですが、私も現在ではやっていません。全身合併症が問題になっていて、お勧めできなくなってしまいました。もっとも、ルセンティスやアイリーアが高額過ぎるのは問題ですが。
BRVOは網膜の血流が悪くなる病気ですが、血流が不足すると黄斑浮腫という状態になります。
写真のように、網膜が分厚くなってしまいます。浮腫が起きていると、徐々に網膜が破壊されていってしまいます。この方はこれで視力0.5まで下がってしまいました。そのため、抗VEGF製剤の注射で早々に治療をしてやる必要があります。
このように、綺麗に治ります。視力も1.0まで回復しています。しかし、薬が効いている期間は限られていて、病状にもよりますが1-2ヶ月経つと再発してしまいます。この方は3回注射しましたが、再発してしまいました。
注射自体は病気を治す治療ではなく、浮腫を抑えるにすぎません。そのため、注射を続けても浮腫の原因を治す(血流を良くする)ことはできません。そのため、当院では数回注射をしても改善が見込めない場合は手術を勧めています。この方は硝子体手術を行いました。
手術後は再発を認めていません。1発でスッキリです。視力も1.2が保てました。現在は手術して3ヶ月経ちますが、特に悪化する気配はありません。この方は初めは「手術と聞いて抵抗感があった」という事ですが、実際には手術は痛いわけでもなく、そんなに大変な物ではありません。何度も注射するよりは医療費もずっと抑えられるので、特に3割負担の方には良いと思います。
下の写真は発症時。出血が上半分に出ています。
下の写真は手術後。レーザーの跡が見えます。出血はごくわずかです。
霰粒腫は処置後治るまでに時間がかかることがある
2015.10.01 網膜
9月28日ですが、
白内障手術12件(うち入院2件)
無事に手術が終わりました。
本日、当院で白内障手術した方で、「私は乱視がありますか?」と尋ねた方がいらっしゃいました。
もちろん、乱視が0の人は存在しませんが、当院では乱視を減らすレンズを使用しているので、大抵の方は乱視がとても少ない状態になっていますので安心してください。
霰粒腫は処置後治るまでに時間がかかることがある
霰粒腫は眼科の中では比較的よくある病気の一つです。まぶたの中にあるマイボーム腺が詰まることで発症します。マイボーム腺は目が乾かないように油を作る役割があるため、その出口が塞がってしまうと瞼が膨らんでしまいます。
この方は7日前から瞼が腫れていたそうです。結構大きくなってしまったこともあり、切開をすることにしました。
この方は霰粒腫が皮膚側に大きく突出していたので、皮膚を少し切開して霰粒腫の中身を取り出しました。
処置で霰粒腫の中身はしっかりと綺麗にしたのですが、眼瞼の炎症は時間をかけて治るため、処置後すぐにスッキリするわけではありません。炎症を抑える軟膏を付けながら様子を診ることになります。そのため、処置前に「処置した後ですぐにすっきりするわけではなくて、時間をかけて少しずつ良くなりますよ」と説明しています。
下の写真は処置後14日目の写真です。大分小さくなっていますがまだ少しぽっこりが残っています。本人は「大きさが処置前と変わりない」と言っていたのですが、写真を撮ると大分小さくなっているのが一目瞭然です。軟膏を付けてもう少し様子をみてもらったところ、徐々に目立たなくなりました。
実際には切開後もっと早くすっきりする症例もありますが、このように時間をかけて良くなる症例もあります。
外傷性黄斑円孔
2015.08.24 網膜
本日は白内障手術15件 みなさん無事に終わりました。
本日手術したうちの一人は、「宇宙旅行しているみたい」に見えたそうです。もともど0.01の視力だった方なので、今まで見えなかったものが徐々に見えるようになったとは思うのですが、どのように見えたのか気になります。
余談ですが、患者さんの主訴で、「持病を持っている」というものがありました。この言葉に違和感を覚えたのですが、「馬から落馬する」という言葉が連想されたのだと思います。調べてみたところ、落馬と持病は言葉の種類が違うようです。落馬=馬から落ちる、ですが、持病=病気を持つ、ではありません。持病の意味は「慢性的な病気」の事なんだそうです。だから、「落馬する」とはいっても、「持病する」とはいいません。「持病を持つ」は正しいようです。一つ勉強になりました。
外傷性黄斑円孔
外部からの激しい衝撃で網膜の中心である黄斑がダメージを受けることがあります。私が研修医の時には、「サッカーボールのような大きいボールでは目に外傷が生じにくく、ゴルフボールのような小さいボールが危ない」と教わっていました。しかし、実際にはそうでもなくて、野球のボールやサッカーボールのように大きなボールで重症な眼外傷になる方を見てきました。
18歳の子供なのですが、サッカーボールが強く当たってから見えづらくなったという主訴で当院初診。当院に来院した時には、受傷して2週間経っていました。矯正視力は0.04でした。眼底検査を行ったところ黄斑円孔が生じていました。
早急に手術を行った方が良いと考え、硝子体手術を行いました。すると、手術後1週間で円孔が閉鎖していました。ただ、それでも視力は上がりにくくて、矯正視力0.04のままでした。
しかし、若いせいか徐々に視力が戻ってきています。手術後半年で0.2、今回手術後1年ですが、0.4まで回復しました。やはり若いと回復力が違います。下は最近のOCT。見た目は大きくは変わりませんが、視機能に重要なISOSラインが少し回復しています。
外傷後の経過は人それぞれで、みんなが同じように視力が上がるとは限りません。特に黄斑が障害されると視力がガクッとおちてしまいますが、このように少しでも視力が取り戻せればと思います。
糖尿病を急激に治しすぎると逆効果
2015.07.13 網膜
本日は白内障手術10件行いました。。1名は緑内障発作術後で前房がとても浅くなっていて、角膜内皮も700と少なくなっていましたが、とてもきれいに手術が出来ました。
もう1名は円背(背中がまるくなる)があって、姿勢保持に不安がありました。体力がもたなければ片目だけの手術にしましょうと言いましたが、結局両眼ともに手術をすることが出来ました。
糖尿病を急激に治しすぎると逆効果
糖尿病は文字通り、糖が体に悪さをする病気です。そのため、内科に行くと血糖を下げる治療を行います。血液中に糖分が多いと、体内に糖分を取り込まなくすることによって体を守る仕組みができます。そのため、急激に血糖が低下すると、体内では激しい飢餓状態になってしまいます。
そのような場合でも、高血糖が続くのと同じように糖尿病網膜症が急激に進行することがあります。今回はそのような人の話です。
60才代の男性です。糖尿病(このときのHbA1c 8)があるという事で眼底検査をしました。
良く見るとわずかに出血はありますが、おおむね綺麗です。。
しばらく外来で様子を見ていたのですが、ある時期を境に網膜症が出てきて急激に悪化してきました。
上の写真の1年後
急激に網膜出血が増えました。レーザー治療しましょうと言いましたが拒否されてしまいました。そのうち黄斑浮腫も出てきました。
黄斑が膨れています。
そのため、以前まで両眼視力1.2あったのですが、このときは右0.3左0.8まで視力が下がっていました。それでも本人は「いや、見えているはず!」と言って治療を受けてくれませんでした。黄斑浮腫は今では良い治療方法があるのですが、あまり放っておくと治療の効果が減少してしまいます。
糖尿病の治療がどうなっているか調べたところ、もともとHbA1c14.8あったのですが、4か月で5台まで下げて、以後ずっと5を維持しているという事でした。高血糖ももちろん危険な状態ですが、今回の網膜症はむしろ血糖値の下げ過ぎで起きた可能性があります。血糖値が良い分、「自分に糖尿病網膜症は起きないはず」と思っていたのかもしれません。この方はその後音信不通になってしまいました・・・
糖尿病の啓発はとても大事だと痛感しました。家族のフォローでもあると良いのですが。
網膜静脈分岐閉塞症の黄斑浮腫
2015.05.25 網膜
本日は白内障手術11件
無事に終わりました。
先週は猛烈に忙しく、ブログが書けませんでした。
網膜静脈分岐閉塞症の黄斑浮腫
外来で時々見られるこの病気、目の中の血管が詰まる病気なので、心臓で言えば心筋梗塞、脳で言えば脳梗塞と同じような病気です。当然視力を大きく下げることがあるので、ご本人にとってはとてもショックだと思います。こちらでいくら説明しても頭に入らないことがあります。そういった場合、ご家族は比較的冷静であることがおおいため、ご一緒に話を聞いてもらい、不安をなるべく抑えて治療をしようと考えております。
この病気の合併症で黄斑浮腫が生じる事があります。黄斑という大事な部分が浮腫を起こすことによって視力がガクッと下がってしまいます。この状態は治療しても再発することがあるため、患者さんの不安がさらに増すことがあります。そのため、できるだけ再発する回数を少なくして治療を行うことが大事だと思います。
下の写真は70代後半の女性で、視力低下を主訴に来院しました。
診察したところ、網膜静脈閉塞症があって、黄斑浮腫も併発していました。写真をみると、網膜が部分的にむくんで分厚くなっています。浮腫になっている期間が長いほど視力が下がる、という特徴があるため、当院では治療が必要な場合は当日治療をおこなえるようにしています。この場合は抗VEGF製剤を使用して浮腫を治療するのですが、診察後すぐに注射を行いました。
注射翌日の写真です。既に浮腫が随分良くなっています。抗VEGF薬の効果は即効性でとても良い薬だと思います。
注射後1ヶ月の写真です。浮腫がかなり良くなっていることが分かります。しかし、注意しなくてはならないのが再発です。この注射は浮腫を治す力はあるのですが、浮腫の原因となっている網膜静脈閉塞症を治療する力はありません。そのため、抗VEGF製剤が効いている間に網膜静脈閉塞症が落ち着かない限りは浮腫が再発してしまうのです。
注射後2か月。残念ながら浮腫が再発してしまいました。しかも、浮腫がしっかりと再発しています。レーザー治療なども組み合わせて治療していますが、これだけ浮腫がしっかり再発するようだと注射だけでは厳しいかも知れません。という話をご本人にしたうえで、硝子体手術を実施することにしました。
手術後半年して全く再発しなくなりました。もともと黄斑浮腫がしっかり出ていたのを考えると、硝子体手術はかなり浮腫を抑える力が強いようです。初診時0.2だった視力は1.2まで上がっているので、患者さんはとても喜んでいます。
これだけ治療がうまくいくためにはいくつかの要素があります。その中で大事なのが「網膜静脈閉塞症が発症してからの期間」です。網膜静脈閉塞症が発症してから半年以上たつと、治療しても浮腫が治りにくかったり治っても視力が上がりにくかったりします。その点も良く説明して治療を進めています。