網膜色素変性症と拡大読書器
今回は白内障手術を14件行いました(うち入院2件、乱視用レンズ2件)
無事に手術を終えました。
網膜色素変性症と拡大読書器
網膜色素変性症は難病指定されている病気なのですが、現在特に有効な治療がありません。
人によってはかなり見えにくくなります。視野が狭くなったり、暗いところでは殆どみえなかったりします。
網膜色素変性症の方の眼底写真ですが、周辺部で網膜の色が灰色になってきています。
上の写真は健康な人の眼底写真ですが、比較すると色調の違いが分かりやすいと思います。
当院で診ている人の中で、網膜色素変性症の方が「見づらくて文字が書けなくなった」と言いました。そのため、拡大読書器を試してみることにしました。
拡大読書器はいくつか種類があります。大まかにはハンディタイプと据え置き型があります。
文字を読むのにはどちらも良いと思うのですが、書くとなるとハンディタイプはうまくいかないようです。
片手で拡大読書器を持ちながら、もう片手で物を書くことは難しいということでした。据え置き型なら両手が自由になるのですが、一方で画面を見ながら物を書くのは少し慣れが要るようです。
うまく慣れて生活の質が保てればと思います。
糖尿病網膜症治療の難しいところ③
2016.03.28 網膜
本日は白内障手術12件
全て無事に終わりました。みなさん術後の痛みが少なくて経過良好のようでした。
糖尿病網膜症治療の難しいところ③
生活習慣病である糖尿病になる患者さんの性格には一定の傾向があるように思います。もちろん、「傾向」なので、それに当てはまらない方も多くいるということは予め断っておきます。その性格の一つが「医師の指示がなかなか守れない」(今回の話で言うと、禁煙できない)ことです。
糖尿病とともに、「喫煙」も糖尿病網膜症を悪化させます。網膜の血管を細める作用があり、網膜の血液不足を進行させるのです。そのため、糖尿病網膜症が悪い人には「是非喫煙しましょうね」と言って、カルテにも「禁煙指示済」と書くのですが、次に来た時もタバコのにおいがプンプン・・・相当吸っているんでしょうね。この人は当院初診前に既に他院で硝子体手術を何度か行った方なのですが、当院に来始めたときから既に視力が0.02で、生活に大分不自由しているようでした。「なんとか見えるようにしてください、お願いします!!」と強く言ってくるのですが、残念ながら一旦傷んだ部分は良くなりません。これ以上悪くならないように内科の治療も禁煙もしっかりやりましょうね、と言うのですが、それでもタバコを止める気配がありません・・本当に目を守りたいのかなと思ってしまいます。さらに、その後心筋梗塞にもなってしまったようで、とても残念です。
他にも同じような方がいて、重症の糖尿病網膜症と黄斑浮腫がある方なのですが、当院で手術をすることになりました。既往歴を聞いたところ、当院初診2か月前に脳梗塞をしたようです。脳梗塞のある方の場合、黄斑浮腫の治療薬である抗VEGF薬を使うと脳梗塞を悪化させてしまう事があります。(抗VEGF薬には何種類かあり、それぞれ目の外に対する影響はやや異なりますが、基本的にはどれも脳梗塞を悪化させる危険性があります)
そのため、患者さん本人と相談の上、抗VEGF薬を使用せずに治療をすることになりました。浮腫は経過とともに徐々に改善していきました(抗VEGF薬を使うととても早く治るのですが、今回はゆっくり良くなりました)。手術前から「タバコは網膜にも良くないし、脳梗塞にも良くないからやめようね」と良く説明していたのですが、それでもなかなかやめてくれません。この方も外来に入るなりタバコのにおいがするので、よっぽど吸っているのだと思いました。
何度も言うようですが、医師のいう事を良く守ってくれる方も沢山います。また、タバコを吸っていなくても網膜症が悪くなる人も沢山います。しかし、リスクの一つであることは間違いないので、医師の指示を聞いてもらいたいと思います。
糖尿病網膜症治療の難しいところ②
2016.03.14 網膜
本日は白内障手術13件
無事に終わりました。
糖尿病網膜症治療の難しいところ②
前回糖尿病網膜症のお話をしましたが、別の方の話です。
70代の男性の方、1年前に内科からの紹介です。めまいが生じたためいろいろ検査をしているうちに糖尿病発見。蛋白尿もあるようです。(糖尿病の合併症で腎臓が傷んでいるということです)
初診時矯正視力は両眼とも1.2と良好ですが、左眼は一部八の字に見えるということでした。(どのように見えているかは分かりませんが)
OCTで網膜の断面を見ると、視力にとても大事な部分である黄斑(赤矢印)の近くの網膜が傷んでいます。赤い丸で囲った部分の白い線が乱れているのが分かります。これは歪んで見える原因になります。おそらく、以前この部分で網膜症による影響が有ったのだと思います。
初診時に網膜の活動性が有ったのでレーザー治療をしました。本人は糖尿病の治療を真面目にやっていて、HbA1cは6台、網膜症現在は大体落ち着いている状態ですが、それでも一旦傷んだ部分は治りません。
「風邪をひいたとしても治ったら元通りになるけど、糖尿病は治ってもそれまでにこわれてしまった部分は元に戻りませんよ」と外来で良く説明しています。この方は視力が良いうちに糖尿病がある程度落ち着いてよかったですが、それでも「八の字にみえる?」という違和感とはずっと付き合う必要があります。
糖尿病網膜症治療の難しいところ
今回は白内障手術を12件
無事に終わりました。
糖尿病網膜症治療の難しいところ
患者さんの性格によっては、糖尿病の治療はとても難しいことがあります。「生活習慣病」と言われているだけあって、生活習慣が治らない事にはどうにもなりません。場合によっては患者さんが受診をさぼることもあります。糖尿病になったばかりの場合、今現在視力が下がっているのでもないし、全く不自由しないので治療に熱心になりにくいです。
最近来院した患者さんもそのような方の一人でした。60代の女性なのですが、とても明るい方で外来でも良くお話をされます。もともとは白内障があって昨年3月に来院されました。矯正視力は0.7前後なので若干不自由していたと思います。60代で白内障は若干早いのですが、糖尿病があると白内障は10歳くらい若く生じる事があります。眼底にはすでにレーザー治療をしてあって、糖尿病網膜症は落ち着いているようでした。
白内障手術を予定しようと思ったのですが、HbA1cが10を超えているとの事でした。これはかなり糖尿病が悪いことを示しています。「白内障は治療すれば治るけど、網膜症が悪化したらなかなか治らないよ」と説明して、白内障の手術をおこないました。7月に手術をしたのですが、特に問題なく手術ができました。
術後の矯正視力は両眼とも1.2になって一安心。以後は糖尿病網膜症が悪くならないか定期検査をすることになりました。外来診察時はかならず糖尿病の治療の様子を聞くのですが、一向にHbA1cが減る様子がありません・・今回受診の時にも聞いたのですが、HbA1cが12もあるようです。初診時よりも悪くなっていてビックリしました。恐らくこのままの数字が続くと糖尿病網膜症が再燃してしまいます。
外来で「このままだと失明するかもしれないよ!」と言いましたが、きちんと内科を受診しているか確認しないといけないですね。ちゃんと内科に言っていれば通常はこのようなHbA1cにはならないと思います。
実際に糖尿病網膜症が活発になってしまうと、いろんな治療や手術がうまくいかないことも多くあります。視力に影響する前に糖尿病が改善してもらいたいものです。
糖尿病で目に生じる変化
本日は白内障手術12件行いました。瞳孔が小さい人もいましたが、特に問題なく手術ができました。
糖尿病で目に生じる変化
糖尿病は全身の血管にダメージを与える病気ですが、当然目の中の血管にも影響してきます。
自分で目の中を見ることはできないので、目の中がどのようになっているか知らない人も多いのではないでしょうか?
まずは以前他院でフォローされていて、当院に来院された末期の糖尿病網膜症方の眼底写真です。視力は0.02です。
次に、20代の正常な眼底写真です。
パッと見て全然違うと思うのですが、解説していきたいと思います。
矢印の部分は視神経乳頭というのですが、正常では肌色をしています。
神経がダメージを受けるとだんだん白くなっていきます。糖尿病の方は真っ白ですね。相当視神経が傷んでいるのだと思います。
網膜は血液で栄養されています。太い血管の方が静脈で、細いほうが動脈(矢印の先)です。正常では、静脈と動脈の太さの比率は3:2程度です。
糖尿病の方の動脈はとっても細いですね・・・一部は写真で確認しづらいくらいです。
網膜のなかで黄斑と呼ばれる部分があります。正常ではこの矢印の場所です。網膜の中でも一番大事な部分で、ここがやられると急激に視力が落ちます。
糖尿病の方は黄斑の色が変になっています。こうなると視力はほとんど出ません。
病気というと「治療すると治る」イメージがあるかもしれませんが、糖尿病網膜症はそうではありません。
いつも火事に例えるのですが、医療でできることは「火を消すこと」だけです。焼けてしまった家を治すことはできないのです。