有水晶体眼内レンズ
2015.01.27 近視治療
本日は
白内障手術7件(乱視用レンズ3件)
翼状片2件
眼瞼内反症手術1件
霰粒腫2件
全て無事に終わりました。
現在当院で導入を進めている、近視治療についての説明です。
有水晶体眼内レンズ
今回は新しい手術について説明しようと思います。一般的には眼内レンズとは白内障の手術で使うレンズを言う事が多いのですが、これは濁った水晶体(白内障)を取り去る代わりに人工のレンズを入れるというものです。
それに対して有水晶体眼内レンズとは、水晶体を取り除かずにレンズを眼の中に挿入するというものです。
実際に眼の中に入れるレンズです。いくつか穴が空いているのが特徴で、これのおかげで眼内の水の流れがブロックされないようになっています。レンズの中心に穴が空いていて見えにくくないのかが気になりますが、これは視機能には影響がないようです。
手術の方法としてはとてもシンプルで、麻酔をしてレンズを入れるだけです。
同じ近視を治す手術であるレーシックと比較していくつかメリットがあります。
①レーシックの場合、くっきり度がやや減ることが分かっていますが、有水晶体眼内レンズは比較的くっきりと見えます。
②レーシックは手術後時間とともに近視が出てくることがありますが、有水晶体眼内レンズは近視が出てくることが少ないようです。
③レーシックの場合、術後トライアイが出ることが多いのですが、有水晶体眼内レンズではドライアイがあまり出ません。
④有水晶体眼内レンズでは、術後レンズを取り出すと元の状態に戻すことができます。
⑤レーシックよりも強い近視、強い乱視を治すことができます。
⑥海外では37万例も行われているようです。日本でも徐々に増えています。
近日中に開始したいと思いますので、どんな手術か興味のある方は是非外来にお越しください。
低濃度アトロピンによる近視抑制の検証その2
2014.08.25 近視治療
本日は白内障手術9件
翼状片手術1件
結膜弛緩症手術1件
すべて無事に終わりました。
低濃度アトロピンによる近視抑制の検証その2
以前アトロピン点眼液が近視を抑えるという事をブログで書きました。
https:/moriyaganka.com/blog/31205076.html
今回は、アトロピン点眼液を開始して1年以上経過観察できた症例が増えてきたのでまとめてみました。
うちで1年きっちりデータを取れたのは8名でした。脱落はそこそこいますね。やっぱり効果を実感しにくいというのはこの治療の欠点ですね。ただ、散瞳や結膜炎などの合併症は1人もいませんでした。
それぞれのデータでいうと1年の眼軸(目の奥行の長さ)の伸び(mm)は
0.30
0.28
0.12
0.14
-0.01
0.06
0.21
0.22
-0.14
-0.11
0.50
0.44
0.46
0.50
0.15
0.12
平均して0.20mmでした。論文のデータ(2年で0.41mm)とほぼ同じ感じです。それぞれのデータをみると、点眼していてかなり抑えられている感じの子供と、伸びてしまっている子供がいます。伸びている子供は、すでにある程度近視が強いです。そういった方は、元から眼軸が伸びやすい要素を持っているのだと思います。「点眼してなかったらどのくらい伸びたか?」を検証できないのが難しいところです。ただ、眼軸の長い子供でも、眼軸の伸びが抑えられている人もいます。不思議なのが、僅かずつですが眼軸が短くなり続けている子供もいます。不思議です。
低濃度アトロピンによる近視抑制の検証
2014.01.20 近視治療
本日は白内障手術10件
眼瞼内反症手術を1件行いました。すべて無事に終わりました。
低濃度アトロピンによる近視抑制の検証
以前アトロピン点眼液が近視を抑えるという事をブログで書きました。
https:/moriyaganka.com/blog/31205076.html
当院で0.01%アトロピンの開始してしばらく経ちましたので、その効果を検証しました。
おさらいをすると、眼軸長は眼の奥行のながさで、近視が強いほど長くなります。
私が参考にした論文によると、0.01%アトロピンを使用すると2年間で眼軸長は0.41mm伸びたそうです。
別の論文では、無治療では1年で平均0.7mm眼軸が伸びたとするものもありました。
当院で6か月フォローできた患者さんの7人14眼の眼軸長の変化は、半年で平均0.07mmでした。2年に治すと0.28mmですから、良く効いているのではないかと思います。
興味深いのが、1名ですが眼軸が減った人がいました。両目とも同じように0.1mmほど減っていたので、測定ミスではないと思います。一方で、両目とも0.3mm増えていた人もいました。
近視の進行が抑えられるということが検証できたので、しばらくこの治療を続けてみようと思います。
アトロピン点眼治療の様子
本日は白内障手術8件
眼瞼内反症手術1件
翼状片手術1件
すべて無事に終わりました。
アトロピン点眼治療の様子
4月からアトロピン点眼治療を開始して、2人だけですが再診しました。
まだ開始して3か月ですが、全く近視は進行しておらず、眼軸長も全く伸びていませんでした。今後もっと人数と期間が増えてくれば、アトロピンの作用がはっきり分かるようになると思います。
気になっていた副作用については、まったくありませんでした。文献によると、0.01%では殆ど散瞳しないということでしたが、その通りでした。また、調節力が落ちて不自由を感じている方もいませんでした。アレルギー性結膜炎の副作用が最も頻度が高いようですが、その訴えも現在のところありません。
簡単ですが、当院で行っている治療の根拠となっている論文を紹介します。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21963266
アトロピン0.5%、0.1%、0.01%の安全性と有効性を検討した論文です。オフサルモロジーという雑誌は、眼科の中でも権威ある雑誌です。
この論文では、400人の子供(6-12歳)を2年間にわたって調査しています。
2年間での近視進行度ですが、-0.3D (0.5%)、 -0.38D(0.1%) -0.49D (0.01%)ということでした。以前の論文で、-1.2D(アトロピン点眼なし)、-0.28D(1%)だったようです。0.01%だと、高濃度アトロピンより効果が落ちる感じがしますが、点眼していない時と比較すると微々たる違いなのが分かります。
2年間での眼軸長の変化は、0.27mm(0.5%) 0.28mm(0.1%) 0.41mm(0.01%)でした。基本的には眼軸(眼の奥行の長さ)が長くなると近視が進みます。これも、0.01%で効果が低い(眼軸長が伸びている)感じがしますが、これもわずかな差でしかないようです。
0.01%アトロピンの魅力は、副作用の少なさです。他の濃度ではアレルギー性結膜炎が生じたようですが、0.01%では生じなかったようです。
近視をおさえる治療 その3 メガネによる治療
今回は
白内障手術 13件 (うち眼内レンズ縫着術1件)
硝子体手術 4件
眼窩脂肪ヘルニア手術1件
無事に手術を終えました。
このところ手術の申し込みが増えてきた関係で、1ヶ月ほどお待ちいただくようになりました。
近視をおさえる治療 その3 メガネによる治療
今回は近視治療の最終回、メガネについて話をします。
今は学童が学校検診でひっかかって、眼科に来る時期です。そのため、眼科で検査をして、「メガネをかけるかどうか」という相談をすることになります。しかし、「近視になって、視力が〇〇になったから、メガネをかけた方がいいですね」と親にいっても頑なにメガネを作ろうとしない事が良くあります。大抵の場合「メガネを作ると近視が進むから」という理由です。また、メガネをつけたり外したりしていると近視が進むと思っている方もいます。これに関しては、いくつか報告があるのですが、まとめると
「メガネを付け外ししても近視の進行に影響がない」
「メガネを我慢してつけなくても近視の進行に影響がない」
「低矯正のメガネをしても、近視の進行を抑えないという報告もあれば、抑えるという報告もあります。ただ、近視の進行を抑えたとしても微々たるもののようです」
「過矯正のメガネの場合、近視が進行する可能性がある」
本来老人でかけるはずの遠近両用メガネに関しても、近視をおさえるという報告があります。ただ、これも効果が低いようで、3年間で0.64Dということでした。子供は調節力があるから、遠方用のレンズで近くも見てしまうのではないでしょうか。
他にも、近視を治すメガネは筑波大学をはじめいろいろなところで研究されています。しかし、今まで聞いたところによると、特殊コンタクトレンズ(オルソケラトロジー)の方が効果が高いようです。今後良い結果が発表されれば、逐一報告したいと思います。
とある県のデータです。1.0未満の割合は中学校で5割、高校で7割程度になるそうです。この殆どが近視と考えると、それだけ近視で困っているひとは多いと思います。その人たちに少しでも治療ができればと思います。