アトロピン点眼治療の様子
本日は白内障手術8件
眼瞼内反症手術1件
翼状片手術1件
すべて無事に終わりました。
アトロピン点眼治療の様子
4月からアトロピン点眼治療を開始して、2人だけですが再診しました。
まだ開始して3か月ですが、全く近視は進行しておらず、眼軸長も全く伸びていませんでした。今後もっと人数と期間が増えてくれば、アトロピンの作用がはっきり分かるようになると思います。
気になっていた副作用については、まったくありませんでした。文献によると、0.01%では殆ど散瞳しないということでしたが、その通りでした。また、調節力が落ちて不自由を感じている方もいませんでした。アレルギー性結膜炎の副作用が最も頻度が高いようですが、その訴えも現在のところありません。
簡単ですが、当院で行っている治療の根拠となっている論文を紹介します。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21963266
アトロピン0.5%、0.1%、0.01%の安全性と有効性を検討した論文です。オフサルモロジーという雑誌は、眼科の中でも権威ある雑誌です。
この論文では、400人の子供(6-12歳)を2年間にわたって調査しています。
2年間での近視進行度ですが、-0.3D (0.5%)、 -0.38D(0.1%) -0.49D (0.01%)ということでした。以前の論文で、-1.2D(アトロピン点眼なし)、-0.28D(1%)だったようです。0.01%だと、高濃度アトロピンより効果が落ちる感じがしますが、点眼していない時と比較すると微々たる違いなのが分かります。
2年間での眼軸長の変化は、0.27mm(0.5%) 0.28mm(0.1%) 0.41mm(0.01%)でした。基本的には眼軸(眼の奥行の長さ)が長くなると近視が進みます。これも、0.01%で効果が低い(眼軸長が伸びている)感じがしますが、これもわずかな差でしかないようです。
0.01%アトロピンの魅力は、副作用の少なさです。他の濃度ではアレルギー性結膜炎が生じたようですが、0.01%では生じなかったようです。
近視をおさえる治療 その3 メガネによる治療
今回は
白内障手術 13件 (うち眼内レンズ縫着術1件)
硝子体手術 4件
眼窩脂肪ヘルニア手術1件
無事に手術を終えました。
このところ手術の申し込みが増えてきた関係で、1ヶ月ほどお待ちいただくようになりました。
近視をおさえる治療 その3 メガネによる治療
今回は近視治療の最終回、メガネについて話をします。
今は学童が学校検診でひっかかって、眼科に来る時期です。そのため、眼科で検査をして、「メガネをかけるかどうか」という相談をすることになります。しかし、「近視になって、視力が〇〇になったから、メガネをかけた方がいいですね」と親にいっても頑なにメガネを作ろうとしない事が良くあります。大抵の場合「メガネを作ると近視が進むから」という理由です。また、メガネをつけたり外したりしていると近視が進むと思っている方もいます。これに関しては、いくつか報告があるのですが、まとめると
「メガネを付け外ししても近視の進行に影響がない」
「メガネを我慢してつけなくても近視の進行に影響がない」
「低矯正のメガネをしても、近視の進行を抑えないという報告もあれば、抑えるという報告もあります。ただ、近視の進行を抑えたとしても微々たるもののようです」
「過矯正のメガネの場合、近視が進行する可能性がある」
本来老人でかけるはずの遠近両用メガネに関しても、近視をおさえるという報告があります。ただ、これも効果が低いようで、3年間で0.64Dということでした。子供は調節力があるから、遠方用のレンズで近くも見てしまうのではないでしょうか。
他にも、近視を治すメガネは筑波大学をはじめいろいろなところで研究されています。しかし、今まで聞いたところによると、特殊コンタクトレンズ(オルソケラトロジー)の方が効果が高いようです。今後良い結果が発表されれば、逐一報告したいと思います。
とある県のデータです。1.0未満の割合は中学校で5割、高校で7割程度になるそうです。この殆どが近視と考えると、それだけ近視で困っているひとは多いと思います。その人たちに少しでも治療ができればと思います。
近視をおさえる治療 その1 点眼治療
もう4月も終わりです。花粉症がひと段落したと思ったら、今度は学校検診でひっかかった子供が来院するようになりました。よく聞かれるのが「近視を直したいのですが」とか、「近視が進まないようにするにはどうしたらいいのですか」ということです。今まであまりお勧めできる方法が無かったのですが、ここ最近いくつか治療方法が出てきたので、紹介したいと思います。(これから紹介するのは、あくまで近視の進行をやや緩徐にするだけで、今ある近視を治す治療ではありません)
近視をおさえる治療 その1 点眼治療
どこの国でも、近視の人口が増えていることが問題になっています。アメリカでは1970年には近視の割合が25%だったのですが、2000年には41%まで増えてしまいました。
近視を予防もしくは治療しようとする試みは今までたくさん行われてきましたが、あまり有用な手段はありませんでした。そのため、特に日本では民間療法が乱立しました。今でも「トレーニングで近視が治る」とか、「超音波をあてれば近視が治る」という広告を目にしますが、実際に有効だと示した論文に出会ったことはありません。
ここ数年、近視治療でいくつか成果がでている治療法が発表されたので、紹介していきたいと思います。まず一つ目は点眼治療についてです。
従来、日本では近視予防目薬で調節麻痺剤 トロピカマイド(ミドリンM)が処方されていました。これは、ピントを調節する筋肉である毛様体筋を弛緩させることで近視を和らげるというものです。
実際に点眼をすると、すぐに効果が出て、近視が少なくなります。しかし、近視の進行を抑える効果は殆どないらしく、点眼していても近視が進んでしまいます。また、点眼をやめると近視は元に戻ってしまいます。
アメリカでは双子の片方の子供にミドリンMを点眼して近視の進行が抑えられるか調べた研究がありましたが、結局近視の進行は抑えられなかったようです。このため、日本以外ではこの点眼を近視予防のために使う国はあまりありません。
アトロピン点眼液は、近視進行予防で大きな効果があるということで、沢山論文が発表されています。いくつかの論文を見ると、近視がすすむ速さは半分から3分の1程度になるようです。
先ほどのミドリンMと同じ種類の薬(抗コリン薬)ですが、効き目がとても長く、1-2週間ほど効果があります。以前は、散瞳するほどしっかり効かせないと近視を抑制できないとされていましたが、最近では、0.01%程度の超低濃度でも効果があるとされています。アトロピンは副作用の多い目薬で、瞳孔が開いたり、ピントの調節ができなくなったり、充血したり、全身の副作用も多いくすりですが、0.01%だと、そのような副作用が出にくいようです。
この治療は日本ではあまり一般的ではありませんが、アジアなどではかなり一般的になっているようで、特に台湾では殆どの眼科医が近視進行防止にアトロピンを用いているようです。当院でも低濃度アトロピン自家製剤による治療を行っておりますので、興味のある方は相談にお越し下さい。
英語の得意なかたはこれも読んでみてください
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21963266
今年もよろしくお願いいたします。
2013.01.04 もりや眼科