緑内障の手術について(選択的レーザー繊維柱帯形成術:SLTレーザー)
2012.09.20 緑内障
先日、緑内障のSLTレーザー治療について「どんな治療なのでしょうか?」という質問がありました。折角の機会なので、今回のテーマにしたいと思います。
当院ではここまでできますよ、という紹介になればと思います。
緑内障の手術について(選択的レーザー繊維柱帯形成術:SLTレーザー)
以前、目の中における水(房水)のめぐり方について説明させていただきました。おさらいをすると、房水は下の写真の矢印の部分から出ていきます。ここは「繊維柱帯」といって、メッシュ状の構造をしています。房水はここを通過するときに抵抗があります。
今回紹介するSLTレーザー(Selective Laser Trabeculoplasty : SLT)は、房水が繊維柱帯を通過しやすくなることで眼圧を下げる治療です。SLTレーザーはメラニン色素に良く吸収されるようにできているので、周囲の組織をあまり破壊しないで、繊維柱帯に吸収されるようにできています。SLTレーザーが繊維柱帯に吸収されると、熱凝固を起こします。その際に、繊維柱帯が縮むため、結果として防水が流れやすくなります。
上の図は繊維柱帯の模式図です。繊維柱帯(黒い部分)の隙間(白い部分)を房水の通ります。左の図はレーザーする前です。レーザーで繊維柱帯が細くなると、その分房水の通り道が広がります(右図)。
治療時間は5分程度です。痛みは殆どありません。この治療の特徴は、患者さんの身体的負担がとても少ないことにあります。SLT治療を受けた患者さんは、当日から普段と変わらない生活ができます。これは、他の手術である繊維柱帯切除術など手術が身体的負担が大きいのと比べると異なります。
術後一時的に眼圧が上がることがあり、点眼や内服薬で対応することがあります。大抵の場合、1週間程度すると眼圧が落ち着いてきます。
治療効果ですが、一般的には眼圧を3から5mmHg程度下げます。ただし、無効である場合もあって、3割程度が効果がはっきりしません。また、時間とともに眼圧を下げる効果が減ることもあります。
緑内障の点眼を減らしたい、または点眼を使ってもなかなか下がりきらないという場合には、検討する価値のある治療だと思います。費用がややかかるのが難点です。片眼につき1割負担で1万円弱、3割負担で3万円弱になります。当院では最新型のellex社のSLTを使用しております。
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視神経を診察する
2012.09.13 緑内障
最近、「知り合いから紹介されて来た」という方が増えて来ました。私としてはとても嬉しい限りです。今後も患者さんに満足していただけるよう、精進していきたいと思います。
視神経を診察する
今までのブログで、緑内障が進行すると視野が狭くなることや、緑内障の進行には眼圧が重要であることをお話しました。では、なぜ緑内障で視野が狭くなるかというと、「視神経がダメージを受けるから」です。緑内障は別名「緑内障性視神経症」とも言われており、実は神経の病気なのです。
ですから、緑内障患者さんの診療では視神経の診察が必須です。当院で初診の方はまず視神経の診察から始まります。視神経の診察のためには、眼底検査を行います。
これが眼底です。目の中を診察するとこのように見えます。緑の矢印の部分は「視神経乳頭」と言います。視神経の元気そうな方(緑内障でない人)は下の写真のような形をしています。
ピンクの矢印が視神経です。ここの厚みがしっかりあれば、視神経は「元気」ということです。
ところが、緑内障などで視神経が傷むとピンクの部分が薄くなっていきます。
下の写真は末期の緑内障の方の視神経乳頭です。視神経に相当する部分(ピンクの矢印)が殆どありません。緑内障が完全に進行してしまった人は、この視神経がぺちゃんこになってしまいます。
緑内障の診療では、視神経の形の変化を追っていく必要があります。神経の厚みの変化は非常に微細なので、定期的に眼底写真を撮って、比較することが大事だと思います。
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MD値を理解して、緑内障診療を理解する
2012.09.06 緑内障
今日は一時的に豪雨と雷がすごかったですね。実はここに引っ越してから度々雷に悩まされています。
自宅では停電になったこともありましたが、今回当院では突然インターネット回線が遮断されてしまいました。
当院の電話はインターネット回線を利用しているので、午後は電話も通じなかったと思います。
もしかするとご迷惑をおかけしたかもしれません。
明日インターネット工事会社が来て修理してくれることになりましたので、それまでご迷惑をお掛けすると思いますが、悪しからずご了解ください。
MD値を理解して、緑内障診療を理解する
先日、視野計の読み方を書きましたが、その時にMD値について説明しました。
軽くおさらいをしておくと、MD値というのは、同じ年齢の正常者と比較した視野の欠け具合を表したもので、緑内障の場合、緑内障が悪化しているかどうかの指標になります。
一般的に、緑内障の場合、MD値が6以下で軽度、6-12で中程度、12以上で重度と判断します。
この視野検査のMD値を数年分まとめて表にすると、緑内障の進行具合がわかります。
数年分のMDを表に記入してみます(上の表の黒い点)。すると、おおよその傾向が見えてくると思います(緑の矢印)。緑の矢印が右肩上がりであれば、緑内障は進行していることになります。また、その傾きが急であればあるほど緑内障が早く進行していることになります。
もっとも、視野検査は自覚検査といって、患者さんの反応を記録したものです。ですから、検査をした時の調子によって、結果がかなり異なります。しっかり頑張って検査をすると良い結果がでますし、昼食後の眠い時間に検査をすると結果が悪くなるかもしれません。そのため、数回分の結果をまとめてから傾向を判断するのが良いと思います。
MD値が年に平均1ずつ増えていれば、それは進行が早いと言えるかもしれません。逆に、0.2程度ずつであれば、10年たってもMD値が2程度しか増えない計算になり、(患者さんにもよりますが)緑内障の進行が緩やかと言えるかもしれません。
MD値が明らかに増えていっている場合、点眼の種類を増やしたり、SLTというレーザー治療や緑内障手術を行う検討をしなくてはなりません。
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視野検査結果の読み方(初級編)
2012.08.30 緑内障
もりや眼科を開業して2ヶ月が経とうとしています。
本日は時間外の患者さんも来院されて、診察しました。私一人ですのでいつでも診察できるというわけではありませんが、極力対応して地域の方の役に立ちたいと思います。
視野検査結果の読み方(初級編)
視野検査の結果をもらえる眼科は少ないと思います。また、実際にこの紙を貰っても、どういう風に読んで良いか分からないと思います。緑内障の治療を患者さんと一緒に行いたいという思いがあるので、当院では希望の方には視野検査の結果を解説つきでお渡ししております。
視野検査の結果は、このような紙で出てきます。ざっと見ても、情報量が多すぎるし、何を言ってるか分からないと思います。
1 氏名、検査日、左右を確認
結果の左上に氏名、検査日、左右が書いてあります(ここでは氏名は消してあります)左右どちらの目のデータかを確認してください。
視野検査の機種によって様々ですが、カラーもしくはモノクロで網膜の感度が表示されます。
赤矢印の部分は以前お話した「マリオット盲点」という、もともと見えない部分です。
年齢と比較して、よく見えていれば白色、見えなければ黒色になります。この結果の場合、右目で見たときに右下の方がやや見えにくい、ということになります。
緑内障の患者さんを長期間診療していると、「この人が悪くなっているのかどうか」ということを判断しなくてはなりません。その時役に立つのが「MD」という数字です。この数字が増えていれば「緑内障が進行している」、同じくらいであれば「緑内障はあまり進行していない」と言えるかもしれません。
一般的に、緑内障の場合、MD値が6以下で軽度、6-12で中程度、12以上で重度と判断します。
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視野検査について(視野検査の受け方、固視点)
2012.08.20 緑内障
視野検査について(視野検査の受け方、固視点)
白内障手術 3件
無事に手術を終えました。
さて、また今回は緑内障の話です
緑内障など、視野に異常のある疾患が疑われると「視野検査をしましょう」と言われますが、視野検査とはどのような検査なのでしょうか
視野計には幾つか種類があるのですが、当院採用している視野計で説明いします。
視野計の中はドーム状になっています。この中で真ん中に光っているところがあります。これを「固視灯」といって「ここを見続けてください」というところです(下の写真の赤矢印)。視野検査は目を動かしてしまうとうまく計測することができなくなってしまいます。ですから、目が正面に向くよう、固視灯がついています。
検査が始まると、「ピッ」という音とともに、ドーム内の色々なところが光ります(上の写真の緑矢印)。これによって、網膜の色々な部分が刺激されることになります。明るい光から暗い光までさまざまな光がでます。これによって、網膜の色々な部分の感度がわかるわけです。それぞれの網膜の感度を集計すると、「この人はどのくらいの広さが見えるのか」(=視野)が分かります。
たまに「ピッ」と鳴っても光らないことがあります。これはいわゆる「引っ掛け」です。この検査を良く理解してない人は、時々音に反応してボタンを押すことがあります。そうすると、きちんとした結果が出ないことになります。検査の結果には引っ掛けにいくつ引っかかったか記載されますので、それを見ると「しっかり検査ができたか」というのがわかります。
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