もりや眼科

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緑内障薬(プロスタグランジン系)による眼瞼炎

2015.09.07

本日は白内障手術を14件行いました。

緊張の強い方や認知症の方がいらっしゃいましたが、無事に手術を終えました。

 

緑内障薬(プロスタグランジン系)による眼瞼炎

緑内障の点眼治療で現在一番効果が高いとされているのがPG(プロスタグランジン)系点眼薬です。1日1回にもかかかわらず、かなり眼圧を下げてくれます。全身的な副作用がないのも魅力的です。

しかし、点眼の特性上、結膜の充血や瞼縁皮膚の色素沈着など、見た目に関わる副作用が多いために若い女性に使用しにくいのが欠点です。頻度は高くないのですが、眼瞼炎が生じる事もあります。

この方は、PG薬を2年点眼していた方です。徐々に増える眼瞼縁の原因がタプロスの可能性があると考え、別の緑内障薬に変更しました。

PG

下はPGをやめて半年後の写真です。

PG中止後

結構充血が減ってきています(睫毛も少し薄くなりました)。やはりPG薬が原因だったのかもしれません。

緑内障の点眼は、どれも何かしらの欠点があります。しかし、点眼をしないと眼圧が上がり、緑内障が悪化する原因になります。副作用が生じたと考えても自己判断で休薬せず、かかりつけの医師と良く相談してみてください。

 

 

急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)について

2015.07.27

本日は白内障手術12件(うち乱視用レンズ2件)

眼瞼腫瘍切除術1件

無事に終わりました。

 

急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)について

目の中には前房・後房と呼ばれる空間があります。ここには「房水」と呼ばれる水が溜まっています。この水は、後房から瞳孔を通って前房に出ます。

 無題

 しかし、稀に、水晶体が瞳孔をふさいでしまって、房水が後房で溜まってしまうという状態が起きます。これを急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)と言います。緑内障発作になると、激しい眼痛があり、失明する危険性があります。

特に、白内障によって水晶体の厚みが増える年齢(60歳以降)で、小柄な女性は緑内障の発作を生じやすいと言われています。緑内障発作のリスクがある方は、前房が狭いという特徴があります。

 

通常の前房(広い前房)

  無題

  緑内障発作を起こしやすい方の前房

 無題

 緑内障発作を起こすリスクが高い方にはレーザー虹彩切開術(Laser iridotomy : LI)にて、房水の通り道を作ります。下はレーザーで虹彩に小さな穴をあけた後の写真です。緑の矢印の先に黒い穴が開いています。これが房水の通り道となって緑内障発作を防止します。

 無題

本日来院された方は、70代の女性の方ですが、昨日から左目が痛くて仕方がないという事で来院されました。診察すると、眼圧70mmHgで緑内障発作を起こしていました。

眼圧がとても高かったため、眼圧を下げる点滴を行いながら、上記のLIを実施しました。

     無題

 上の写真で赤い矢印の先から光が漏れています。目の中の水が通るバイパスを作りました。しばらく点眼を行いながら2時間ほど様子を見ていたのですが、眼圧が下がる気配がありません・・・もしかすると水晶体がレーザーで穴をあけた部分も圧迫して塞いでいるのかもしれません。

眼圧を早く下げないと視神経が一層傷んでしまうため、白内障手術を行いました。緑内障発作は虹彩と水晶体の間の通り道が閉じることで生じるため、基本的に白内障がなくなったら治ります。水晶体の支えであるチン小帯が弱くなっていて、角膜も高眼圧浮腫を起こしていたので幾らか手術がし辛かったのですが、無事に手術が終わりました。手術後1時間の眼圧は16mmHgと正常値でした!

先ほどご本人に連絡したところ、明るくなったということでしたので、何とか失明は免れたのかと思います。早い対応が出来て良かったと思います。

 

 

落屑があっても心配しないで(落屑緑内障)

2015.04.20

落屑があっても心配しないで

 

緑内障の1種で「落屑緑内障」と言うものがあります。結構前に記事にしました。

 

いろいろな緑内障(落屑症候群による緑内障(落屑緑内障): PE glaucoma)

下の写真の赤矢印の先に小さくて白い点がありますが、これが落屑です。

落屑

このフケのような物質が房水の出口を塞いでしまうことがあり、そのために眼圧が上がってしまいます。落屑緑内障の頻度は70歳で約100人に1人、40歳で400人に1人と言われています。

 緑内障の患者さんが沢山いることを考えると、この落屑緑内障は比較的患者数の少ない病気です。それもあってか、「あなたは落屑緑内障です」と言われるとびっくりしてしまうようです。先日も落屑緑内障と指摘されてとても動揺している患者さんがいました。

 落屑があったからといって必ず緑内障になるわけではありません。ある報告によると、落屑があっても4人のうち3人は緑内障にならないとも言われています。通常よりも緑内障のリスクが高くなるので、定期検査はとても重要だと思います。しかし、落屑があっても緑内障にならない人の方が多いのです。

 また、落屑があると水晶体を支えている筋肉が弱くなり、手術がしにくくなることがあります。落屑がある方で、散瞳薬を付けてもなかなか散瞳しにくい場合はとても注意して手術をすることがあります。手術しにくくなるほどになってしまうことはかなり稀なことで、これに関しても眼科できちんと診てもらっていれば適切な時期に白内障手術を勧めてくれると思います。

 例えば、外傷などで目の中で出血した場合はこのようになります。前房出血

ドレッシングのように上下で分離してみえます(上は透明な水、下は出血で赤色になります)。落屑が徐々に増えるとこのようになってしまう・・と思うかもしれませんが、実際にはこのようになる人はいません。おそらく、落屑は眼のなかで生じて時間が経つと眼の外に出ていくようになっているのだと思います。ですから「眼の中が落屑で一杯になる」ことはありません。

進行した白内障がきっかけで生じる緑内障発作

2015.02.24

本日は白内障手術12件 うち乱視用レンズ2件

無事に終わりました。

緊張の強いとおっしゃっていた方には沈静をかけたので、多少は楽に手術を受けていただけたと思います。

 

進行した白内障がきっかけで生じる緑内障発作

 

通常の白内障であれば、よっぽどでなければ手遅れというのはなくて、いつ手術しても本来の視力に戻ります。よっぽど進行した白内障の場合、白内障を細かく砕いて吸引するのに苦労することはありますが、他の眼疾患がなければ基本的に視力は上がります。

 

白内障も色々なタイプがあるのですが、水晶体の厚みが分厚くなっていくタイプの白内障があります。水晶体が厚くなると、目の中の水の通り道が塞がってしまい、眼圧が急上昇してしまうことがあります。これを緑内障発作と言います(以前記事にしました)。もともと眼が小さい方に生じやすい病気です。これになると、白内障になっていて見えないだけでなく、突然激しい痛みが生じてしまいます。また、眼圧が上がったまま時間が経ってしまうと、視神経が傷んでしまって失明してしまうことがあります。そうなってしまうと、いくら白内障手術をしても視力がうまく回復しません。 狭隅角

 

これは進行した白内障のために緑内障発作になった方の写真です。虹彩に穴を開けることで水の通り道を作りました。虹彩に穴を開けて緑内障発作を治療する方法については以前の記事を参照してください。

 

視野検査をしてみると、以下の通り。右は正常ですが、左はとても狭い範囲しか見えません。こうなると、白内障手術をしても視野が回復することはありません。

  左緑内障発作後視野

副作用があっても自己判断で点眼をやめないで

2014.03.17

本日は白内障手術を9件、霰粒腫摘出術1件行いました。
かなり重症のIFISの方もいらっしゃいましたが、無事に手術ができました。
IFISについてはこちら

今日は新しいORT(視能訓練士)が入職しました。
これで当院のORTは2名になります。さらに質の高い検査を提供できればと思います。

副作用があっても自己判断で点眼をやめないで

 

緑内障の診療をしていると困ることが時々あります。それは点眼薬をしっかりつけてくれないことです。緑内障は病状を理解するのが難しい病気なので、こちらが「重症の緑内障だ」と思っても、患者さんは気楽にしていることも良くあります。

 

先日あった話ですが、80歳くらいの患者さんが「最近見えにくくなったが、白内障があるかどうか診てほしい」ということで受診しました。確かに白内障は少しあるものの、両目とも視力は1.0。しかし、眼底検査を行うと視神経がかなり傷んでいるようでした。

視野検査を行うと、こんな視野が。


 無題

黒い部分は見えていないということなので、かなり進んだ緑内障と言えます。眼圧は17mmHgで、いわゆる「正常眼圧緑内障」です。それでもしっかりと眼圧を下げないと、緑内障の進行を抑えることができません。そのため、眼圧を下げる効果の高い3種類の点眼薬を処方をしました。しかし、私が感じた危機感は患者さんにうまく伝わっていなかったようでした。1か月後受診時には「まぶたの調子が悪かったから点眼してなかった」とおっしゃっていました。

緑内障が軽ければ、点眼を変更することもできるかもしれませんが、この方は点眼できるものをすべて使用していたので、点眼を減らすことしかできません。点眼を減らすということは、緑内障を抑える力が弱くなるということを意味するので、できればつけてもらいたいのです。もちろん、まぶたが腫れぼったくなるのは嫌かもしれませんが、失明のリスクを考えれば点眼を続けざるを得ないと思うのです。

なんとか自分の病状を理解してもらうべく、色んな方法で啓蒙しています。ブログ始めたての時に話した、盲点のチェックも時々患者さんに試したりしています。


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