白内障手術後の視力を予測する(網膜電図)
2017.06.26 白内障
本日は白内障手術を12件行いました。皆さん無事に終わりました。
白内障手術後の視力を予測する(網膜電図)
進行した白内障があるときに行う検査があります。ERG(網膜電図)です。
これは、網膜(カメラで言うフィルム)の機能を測るものです。通常は白内障手術の前に眼底検査を行って、網膜に問題が無いかどうかを評価します。網膜に異常があれば、白内障手術をしてもうまく視力が上がらないかもしれません。
白内障があまりにも進行している場合には眼底検査ができませんので、手術をして視力が上がるかどうかが評価できない事になります。
以前手術していただいた方の眼底写真です。まったく眼底が見えないのでこのような写真になります。
眼底の評価ができなかったため、網膜電図を行いました。
左の2つが今回手術をしない目で、右の2つが今回手術する目の波形になります。右の2つの波形がほとんどフラットになっています。これは、光をあびさせても網膜が反応しない事を示しています。白内障の影響で網膜まで光が届きにくいという影響もありますが、それだけではこのような波形になりません。そのため、患者さんには「手術しても視力が上がりにくいかもしれません」と説明して、ご納得して手術を受けていただきました。
白内障が大変進行していたので難しかったのですが、無事に手術ができました。上は手術後の眼底写真です。網膜の血管がほとんど見えなくて、血液があまり流れていない事が分かります。網膜色素変性症という病気によって網膜自体がだめになってしまっています。白内障はとてもきれいに出来たので、少しだけですが視力があがりました。
当院で手術する以上は、ご納得して手術を受けていただきたいと思っていますので、手術前の検査がとても重要です。
白内障手術で不安な人が安全に手術を受ける方法
本日は白内障手術を14件行いました。
皆さん無事に終わりました。
白内障手術で不安な人が安全に手術を受ける方法
私は2月にICL手術を受けましたが、手術中にきょろきょろしないか心配でした。後で手術ビデオを見たら、ややきょろきょろしていました。目をギュッとつぶると目が上の方を向いてしまうのです。初めは顕微鏡のライトが見えるので、そちらを見ていれば良いのですが、途中で明かりが見えなくなったときに、どこを見たらいいんだろうと考えてしまうかもしれません。
白内障手術では、超音波で白内障を乳化吸引し始めた時くらいから顕微鏡の光が見えなくなります。そのため、「どちらを見たらいいのだろう」と思いがちです。しかし、実際にはそのときには傷口に超音波の機械が入っているので、そう簡単に目を動かすことはできません。そのため、「見えない時には何もしない」が正解だと思います。
しかし、何かしたくなってしまうのが患者さんの心情のようで、白内障の処理をしている最中もこまめに目を動かしてしまう方がいらっしゃいます。場合によっては顔が動いてしまう事もあります。
何故そうなるかと言うと、気にしすぎてしまうからです。目に神経が集中しすぎているともいえると思います。ぼーーっとしているくらいが正解です。
とはいっても、ぼーーっとするのは結構難しいです。これにはコツがあって、何か別の事を考えると良いのです。良くあるのが「100から7を引き算しつづける」「野菜の名前を沢山挙げる」「今朝の食事内容を説明する⇒昨晩の食事⇒昨日の昼食」と言ってもらうのです。どれも少し頭を使う事なので、目が気になりすぎるという状況が緩和できるのです。
今日手術した患者さんに「野菜の名前を挙げてください」と言ったら、猛烈なスピードで列挙していました。さすが主婦ですね。
手術中にお話するのは多少慣れていないと難しいです。ただ、患者さんになるべく楽に手術を受けてもらいたいので、色々工夫をしています。
白内障手術と角膜の細胞(角膜内皮細胞)
2017.06.05 白内障
本日は白内障手術を12件行いました。
無事に終わりました。
白内障手術と角膜の細胞(角膜内皮細胞)
白内障手術の術前検査で必ず行うのが、この角膜内皮細胞検査というものです。
目にとってはとても重要な検査で、角膜を透明にする作用があります。
赤丸で囲った部分が角膜です。ここの裏側には細胞が隙間なく並んでいます。この部分を写真で撮影するとこのようになります。
上の写真は私の角膜内皮細胞です。左側に細胞がびっしり並んでいるのがわかります。1平方ミリあたり2400個の細胞があります。大体正常範囲内でしょうか。
先日手術したのが下の写真の方です。私の物と比較すると、細胞の大きさが少し大きくなっています。細胞の数が減ると、1個辺りの大きさが大きくなります。この方は1平方ミリあたり1500個で、私よりも大分少ない感じです。
これが500個を切ると視力が出なくなってきます。年齢によっても多少減っていくので、一生500個以上であるように気をつけなくてはなりません。白内障手術によって減ってしまうこともあるのですが、これは丁寧な手術を行う事で角膜内皮細胞が極力減らないようにしています。もともとの細胞が少ない人でも、正常なひとでもみんな内皮細胞に優しい手術を行っています。白内障がとても硬い人の場合、白内障を砕くのに大きなエネルギーが必要になります。その場合、内皮細胞がダメージを受けないように細心の注意が必要になります。
今回写真で出した人は術前から細胞が少なめでしたが、手術後も細胞数が殆ど変っていませんでした。
白内障手術の傷口
本日は白内障手術を14件
無事に終了しました。
白内障手術の傷口
普段やっている白内障手術について。
恐らく手術後に自分の目をみて傷口がどうなっているのかを見る人はほとんどいないと思います。
当院では2ミリ台の傷口をつくって手術を行っています。
このように、スリットナイフというナイフで目に傷をつけます。そこから白内障を吸いだしていきます。
傷口が3ミリ台以下くらいだと、傷を縫合しないでも閉じてしまいます。これを自己閉鎖といいます。縫合してしまうとどうしても乱視が生じやすくなる為、自己閉鎖させた方が見え方が良くなります。
これは手術後の写真です。眼内レンズが目に入っているのが分かります。赤い矢印の先に傷があるのですが、白っぽくなっているのがわかります。創口を意図的にむくませることで傷を閉じやすくしています。
この浮腫みは手術の翌日には殆ど無くなっています。数日すると傷の閉じ具合が良くなるのですが、初めのうちは傷がしっかり閉じている訳ではないので目を触らないように注意してください。
気が付かないうちに進行している緑内障
今回は白内障手術10件
無事に手術を終えました
気が付かないうちに進行している緑内障
緑内障というのは、現在失明の原因ナンバー1になる病気です。
ただ、それでも失明に至る人は少なくて、多くの人は点眼治療でコントロールすることが可能です。また、点眼治療でもうまく眼圧が下がらなくても今は手術治療が進歩していて、それで眼圧を下げることができます。
一方で、初診時にすでに緑内障末期になっていると厄介です。ほぼ失明状態になってから来院した場合にはうまく治療できないことがあります。
最近、「見えづらくなった」と言って来院された80歳台の方なのですが、矯正視力は両眼ともに1.2でしたが、下のような視野でした。左目の視野(左の写真)が真っ黒になっていて、中心部分でようやく見えているだけです。視野がかなり狭くなっています。逆に、右目は視野(右の写真)がとても広いのでほとんど白色になっています。
眼圧を計測しましたが、右は15mmHgくらいなのに、左は30mmHg近くありました。そのため、このままではいつ失明してもおかしくありません。点眼治療をしても十分に眼圧が下がらなければ手術の治療が必要になりますが、手術をしても見えづらさが元に戻るわけではありません。できるだけ視野が多く残っている状態で治療を開始したいです。