白内障は2度生じる?後発白内障について
2013.02.21 白内障
外来をやっていて年に1-2回位患者さんから「先生!白内障の手術をもう一回やってよ!」と言われることがあります。白内障の手術というのは、濁った水晶体を取り出す手術なので、2回取り出すことは残念ながらできません。白内障手術で目の中に挿入した眼内レンズも50年位はもつようなので、滅多なことでは交換しません。恐らく、「白内障手術後の明るくなった体験が忘れられない」から、もう一度体験したいという事なんでしょうね。
ところが、白内障手術で濁った水晶体を取り出したはずなのに、手術後にまた白内障になることがあります。今回はそのお話です。
折角白内障手術をして見えるようになっても、しばらくしてからまた白内障のようになったようなかすみが出てくることがあります。眼内レンズ自体は綺麗なのですが、レンズの表面に濁りが付着することがあります。これを後発白内障といいます。
青い部分は水晶体嚢といって、もともと水晶体を覆っていた透明な膜です。黄色いのは眼内レンズです。
水晶体嚢の裏側には、水晶体の細胞(水晶体上皮細胞)がくっついているのですが、白内障手術で水晶体を取り除いても、水晶体上皮細胞は全部は取り除けません。ごく一部に残った細胞は、手術後に少しずつ増殖をし始めます。あまりに細胞が増殖すると、水晶体嚢に濁りをきたすことになります。
これが後発白内障の写真です。人工のレンズの奥にぷつぷつとした細胞が見えると思います。これのせいで視力がぐっと落ちてしまうことがあります。
水晶体嚢にピントを合わせてこのレーザーをうつと、眼内レンズを傷つけずに水晶体嚢だけ弾くことができます。
眼内レンズの中心部分だけ水晶体嚢を弾いて切開します。この大きさでも通常の瞳孔より大きいので、よく見えるようになります。眼内レンズよりも大きく水晶体嚢を切り開いてしまうと、眼内レンズの位置がずれてしまうので、一般的にはこれくらいの大きさで切開します。
当院では、ellex社のヤグレーザーを使っています。レーザーが眼内レンズにあたると小さな傷がついてしまうことがあるのですが、この会社のレーザーは、とてもよくできているので、レンズをほとんど傷つけずに水晶体嚢を綺麗にすることができます。
手術を受けたあとで注意すること
2013.02.15 白内障
本日は未明から午前9時すぎまで当院が入っているビル全体で電気設備点検のための停電がありました。当院は電子カルテが入っているので、停電回復後にスムーズに起動できるかが心配でした。
9時台の予約を止めていたことに加えて、当院スタッフがとても頑張ったので、大きな混乱なく診療開始できたと思います。
朝の暖房の入り方も遅くなったので、寒くて凍えてしまいました。
この点検は年に1回あるようなので、来年はもう少し早く停電が終わるようビル側にお願いしたいと思います。
手術を受けたあとで注意すること
先週お話したとおり、手術の合併症のうちで一番怖いことは細菌が目に入ることです。そのため、手術後に患者さんに守ってもらいたいことは「目の中に菌を入れない」ということです。
白内障手術で目に付ける傷の大きさは3ミリ以下でとても小さいものです。しかし、手術後の傷は「自己閉鎖創」といって糸で縫ったりせずに閉じています。糸で縫わないことで乱視の発生を抑えているのですが、その反面手術直後に目を打ったりこすったり、ギュッとつぶったりすると傷口が開く可能性があります。
白内障手術をしたあとは特に目が気になるので、手が目に行きやすくなります。人によっては目が痒くなることもあるようです。無意識に目を触らないように、当院では手術後に透明なゴーグルを終日(寝ているときも)つけてもらっております。かなり強いプラスチックで、人が乗っても折れなさそうな感じがします。
ゴーグルの場合、早期から抗生剤の点眼を開始できるので、感染症予防にも有利に働きます。また、手術日の夜から(少しぼんやりですが)物を見ることもできます。
たまに「手術後は好きなテレビを見ないで我慢しました」という方もいらっしゃいますが、物を見ることは特に問題ありません。テレビや新聞などを見ても傷が開くことはまずありません。手術当日は、目につけた傷のせいでゴロゴロすることがあります。その場合は目を開いていると目が動き続けてゴロゴロしてしまうので、寝てしまったほうが楽かもしれません。
白内障手術で一番怖い合併症:術後感染症
2013.02.07 白内障
今回角膜の形を計測する新しい器械が入りました。オルソケラトロジーという新しいコンタクトレンズを処方するときに使用します。オルソケラトロジーは角膜の形を変えることで近視をなおすコンタクトレンズです。今回の器械は角膜の形の変化を調べるソフトがついているので、オルソケラトロジーでどれだけ近視が減らせたかが分かります。
そのソフトを用いて、今度白内障術前後の角膜の形の変化を調べてみたいなと思います。
白内障手術で一番怖い合併症:術後感染症
今回は白内障手術の合併症について説明したいと思います。 白内障手術は、過去数十年でとても進歩した手術の一つだと思います。手術に必要な傷の大きさも、昔は6ミリ以上開けていたものが現在3ミリよりも少ない傷で済むようになりました。その分、安全性もかなり高くなりましたが、ゼロではありません。今回は、白内障手術の合併症のうちで、一番やっかいな感染症について説明したいと思います。 人体の中で全く細菌がいない場所がいくつかあります。骨の中や、脳などは、細菌がひとつもいないような仕組みになっています。逆に、そういう場所に対する手術などで細菌が入り込んでしまうと厄介なことになってしまいます。 細菌を退治するのは、血液中の白血球なので、血流が豊かな場所は比較的細菌に強いです。しかし、目の中は透明であることが必要な部分が多く、そのような場所には血管が存在していないので、どうしても細菌に対して弱くなってしまいます。 白内障手術のあとに目の中に細菌が入り込んで暴れる可能性は大体4000人に一人くらいだと言われています。これは、海外の報告と比較すると少ないのです。おそらく、日本の医療機関がしっかりとした手術をしているということなのだと思います。 当院でも、細菌感染を防ぐための工夫を(やや神経質と思われるくらい)沢山しています。また、患者さんに対して感染防止の指導を行ったり、スタッフに対して感染防止の指導を行ったりもしています。細菌は目に見えないので、どんなに対策をしてもやりすぎということは無いと思います。当院で手術を受けた患者さんがみんな幸せになれるように頑張りたいと思います。
白内障手術で眼圧が下がる
今日は白内障手術を6件行いました。
みなさん無事に手術を終えました。
そのうちの一人は、手術を終えたとたん良く見えたようで、感激しながら手術室を出て行きました。
散瞳しているので凄くくっきりという訳ではないと思いますが、術直後で平均0.7位視力が出ているようです。
以前当ブログでお話した前立腺肥大の内服をしていた方がいらっしゃって、手術中に通常サイズの瞳孔に戻ってしまいましたが、無事に手術ができました。
白内障手術で眼圧が下がる
緑内障患者にとって、眼圧が下がるということはとても大事なことです。点眼治療をして、ある程度眼圧が下がっていたとしても、もっと眼圧が下がったほうが緑内障の進行は遅くなります。ましてや、点眼をすべて使っている人にとっては、これ以上眼圧を下げるためには緑内障のレーザー治療や手術をするしかありません。
緑内障手術程ではありませんが、白内障手術をすることによって眼圧は少し下がるのです。当院での過去数ヵ月の白内障手術を受けた患者さん約50眼の眼圧をまとめてみたのですが、術前の眼圧平均で14.3mmHg 、術後1ヶ月の平均で13.0mmHgでした。私の感覚では1-2mmHg下がる印象でしたが、大体そんな感じでしたね。
これは何故かというと、目の中での房水の循環が良くなったからです。目の中で水晶体は結構大きく、瞳孔の部分で房水が通りにくかったり(下のイラストの赤丸)、隅角(青矢印)で房水が通りにくかったりします。
実際に白内障になっている人は、水晶体がもっと分厚くなっているので、水晶体によって虹彩がもっと前に押されているイメージです。
これは目の断層撮影したものです。上が白内障の手術前(散瞳中)、下が手術後(無散瞳)です。手術前は水晶体が結構大きくあることがわかると思います。目の中のスペース(前房)の深さが赤枠の中に書いてありますが、比較すると0.5ミリ程度深くなっているのが分かります。水晶体と人工のレンズを比較すると、人工のレンズの方が圧倒的に薄いのです。
白内障が進行すると緑内障の視野検査もうまくできなくなり、眼底検査で視神経の様子を診察することも難しくなってきます。そのため、緑内障患者さんの白内障がある程度進行した場合、手術を早めに勧めることがあります。小山市 結城市 筑西市 栃木市 下野市 古河市 栃木市 白内障手術 緑内障手術 もりや眼科
前立腺の薬で白内障の手術が難しくなる
2013.01.25 白内障
はじめは声も出にくくて、手術の説明など聞きにくかったかと思います。すいません。
患者さんのなかに、一言も喋らない患者さんがいて、どうやら私と同じような症状のようでした。
このタイプの咳が流行っているのでしょうか?皆さんにうつさないようマスクをつけて診療を行いたいと思います。
前立腺の薬で白内障の手術が難しくなる
当院では、手術を申し込んだ段階で内科などの内服約のチェックを行います。血液をさらさらにする薬(バイアスピリンなど)は、一般的な外科手術では手術前に内服中止することもありますが、当院の白内障手術では内服中止する必要はありません。術後に白目が赤くなることもありますが、手術の成績には変わりありません。
一方で、前立腺肥大の薬(ハルナール、ユリーフ、フリバス、ユリーフ、バソメット、エブランチル、ミニプレスなど)を飲んでいる方には注意が必要です。前立腺肥大の薬を長期間内服していると、虹彩がふにゃふにゃになってしまうことがあります。これをIFIS(アイフィス)といいます。
水晶体の前にある茶色い部分が虹彩です。水晶体は虹彩の奥にあるので、手術中に虹彩がバタバタすると、手術の邪魔になってしまいます。手術を中止するほどのIFISにはであったことはありませんが、慎重に手術をしなくてはなりません。
手術前に前立腺肥大薬の内服をやめても、IFISのなりやすさは変わりません。そのため、内服は続けてもらっています。最近は前立腺肥大の薬もジェネリックが増えてきたのでチェックが大変になってきました。前立腺肥大の薬を長期間内服するとIFISになりやすいようなので、このような方はやや早めのタイミングで白内障を手術しても良いかもしれません。小山市 結城市 筑西市 栃木市 下野市 古河市 栃木市 白内障手術 緑内障手術 もりや眼科