新しい多焦点眼内レンズ (Lentis)レンティス
2015.06.22 白内障
本日は白内障手術11件(乱視用レンズ 2件)
霰粒腫切開術1件
無事に終わりました。
当院で次世代の多焦点眼内レンズ LENTIS(レンティス)が使用できるようになります。
現在主流である多焦点眼内レンズの問題点の一つはコントラスト(くっきり度)が減ること、夜間にひかりがにじんでしまうことでした。これを減らしたものがレンティスです。一枚のレンズの中に遠くにピントが合う部分と近くにピントがあう部分があります。一見遠近両用メガネのようですが、視線をずらさなくても自然な感じで遠くも近くも見えるようになります。
通常であれば、眼内レンズは0.25Dごとの度数でもっとも近いレンズを選んで使用するのですが、このレンティスは0.01Dごとの受注生産となっています。そのため、他のレンズと比較してピントがばっちり合いやすいという特徴もあります。乱視用のレンズも、角度も1度単位、乱視の度数も0.01D単位で調整することができます。
このレンズは日本国内では認定されていないレンズになるため、先進医療特約が使用できないのが残念なところです。県内ではこのレンズ使用できる施設が殆どないのですが、より多くの選択肢が提示できるようにしたいと思います。
廃用症候群(入院すると体力が低下します)
2015.06.08 白内障
本日は白内障手術10件(乱視用レンズ3件)
霰粒腫切開術1件
無事に終わりました。
廃用症候群(入院すると体力が低下します)
私は趣味でジョギングをするのですが、とある本によると3日走らないと体力が急激に落ちるそうです。若い人でもお年寄りでも、1日をベッドの上で過ごしてしまうと、どこも体を動かさなくなってしまいます。健康な人であっても、ベッドで1週間安静にしていると足の筋力は20%、2週間で40%も低下して体中の関節が固くなったり、歩行が困難になると言われています。これらは過度な安静が原因で、場合によっては認知症や精神症状なども生じやすくなってしまいます。
当院でも時々「認知症だから入院したい」と言われることがあります。もちろん、手術後家族の送迎が難しい場合は入院も仕方がないのですが、環境の変化によって認知症が悪化してしまう事もあります。また、入院のベッドには徘徊防止柵がないため、あまり徘徊が多いようだとスタッフが対応しきれないこともあります。
廃用症候群や認知症を予防するためにも、住み慣れた環境を変えないことが患者さんにとって望ましいとされています。単純に「入院させて病院に任せていれば安心」というわけではありません。
現在当院での白内障手術は創口がとても小さく、早期の社会復帰が可能です。ですから、(程度にもよりますが)軽度の認知症がある方の場合、日帰り手術というのも良い選択だと思います。
幻の白内障治療薬(パロチン)
2015.04.28 白内障
本日は白内障手術10件
翼状片手術1件
眼瞼内反症手術1件
無事に終わりました。
幻の白内障治療薬(パロチン)
白内障手術するにはまだ早いけど、なんとか他に治療方法があればやりたいという患者さんは時々いらっしゃいます。そんな場合、私は点眼を出すのですが「点眼しても白内障は進行しますよ」という事にしています。一旦生じた白内障が消えるわけでは無いし、白内障の進行を抑える効果もあまりはっきり感じないからです。
実は、白内障治療には内服薬もあるのです。それが「パロチン」という薬です。牛の唾液腺ホルモンなんだそうですが、一説には若返りの効果もあるようです。
しかし、1968年に発売されたというとても古い薬であるせいか、きちんと効果があるという証明が出来ていないようです。実際に白内障学会のホームページでは「内服薬は効きません」とはっきり書いてあります。よくよく考えると唾液腺がホルモンを出すというのは初めて聞きました。そもそも唾液腺ホルモンというものは存在しないようです。
私は眼科専門医にもかかわらず、最近までこの薬があることを知りませんでした。周りで誰も使っている人がいなかったので・・・・。一度試してみようかと考えていたところ、実は今月から販売中止なんだとか。原料である牛の唾液腺の調達が困難になったからだそうです。
http://www.aska-pharma.co.jp/eccube/html/upload/save_file/info_deri_parotin_201411.pdf
ということで、今年4月からパロチンが飲めなくなってしまった方には、唯一となってしまった白内障内服薬のチオラ錠と言うものがあります。私はこれも使ったことはありません。
「白内障を進行させたくない」という気持ちは十分分かりますが、実際に白内障の進行を止めるのは難しいです。
白内障のまぶしさを手術で治す
2015.04.13 白内障
本日は白内障手術9件
翼状片手術1件
無事に終わりました。翼状片はとても大きく、目の中心まで達していました。綺麗に手術をしたのでうまく視力が上がってほしいです。
白内障のまぶしさを手術で治す
外来でまぶしさを訴える人は沢山います。若い人のまぶしさは原因が病気でない(網膜の感度が高い)ことが原因と思われることも多いですし、ドライアイで目の表面が乾いてもまぶしくなります。
また、高齢になると白内障で眩しくなることがあります。特に皮質という部分が混濁すると眩しさの原因になることが多いです。先日眩しさを主訴に来院された方の水晶体です。矢印の部分が白内障の濁りです。これだけ小さい白内障でも、結構まぶしいようです。
あまりにも眩しい場合、手術で治療します。しかし、手術前に説明しなくてはならないのが、「白内障手術後でも眩しいことがある」ということです。
白内障手術は濁ったレンズを綺麗なレンズに取り換える手術です。そのため、目の中に入る光の量は増えることになります。全体的に明るくなることで「まぶしい」と感じる場合があります。手術後1か月ほどで慣れてくることもありますが、それでも眩しい場合はサングラスをかけることがあります。
多焦点眼内レンズは近くも遠くもメガネなしで見えるレンズですが、このレンズの欠点が「眩しく感じることがある」というものです。多焦点眼内レンズはレンズの表面に凹凸があります。
この凹凸のお蔭でピントが遠くと近くに合うのですが、逆にこの凹凸が原因で眩しく感じることがあります。
明るい光を見たときに、その周りに光の輪が見える(ハロー現象:上の写真)や、ギラギラして見える(グレア現象)が生じることがあります。そのため、夜間の運転がしにくくなることがあります。
そのため、眩しさを減らすための白内障手術をするのであれば、通常の単焦点レンズの方がお勧めすることが多いです。
視力が出ているのに見えにくい白内障
2015.03.23 白内障
本日は白内障手術8件
眼瞼内反症手術1件
霰粒腫切開術1件
無事に終わりました。
視力が出ているのに見えにくい白内障
白内障は、目の中にある水晶体が濁る病気です。通常視力が下がったら手術をします。
視力検査はみなさんご存知の通り、ランドルト環の切れ目がどちらに向いているのかをこたえる検査です。
ずっと昔からある検査にも関わらず現在でも良く行われているのは、この検査の信頼度がとても高いということでもあります。私も、視力検査はその人の見えかたを良く反映した検査だと思っています。一方で、視機能すべてを評価した検査ではないので、その点も注意する必要があります。視野(見える広さ)は殆ど評価できませんし、白内障で「まぶしくなった」というのも視力検査ではまったく分かりません。
水晶体の一部が混濁した場合、混濁した箇所によっては結構見えづらくなることがあります。後嚢下白内障という種類の白内障は、水晶体のこの部分(下の図の赤い部分)が濁る白内障です。
水晶体の中央付近がにごるため、見えかたをとても悪くします。一方で混濁の広さが狭い場合、視力検査をすると良く視力が出てしまいます。そのため、「かなり生活しにくいけど、視力検査をすると良い視力がでてしまう」という事になります。下の写真は後嚢下白内障の方の眼底写真です。白内障のせいで青い丸の中だけはっきり写っていませんが、他の部分ははっきり写っています。
通常白内障があっても視力検査で良い視力が出た場合はあまり手術を勧めません。一方で、視力検査も万能ではないことを知っていますので、診察や患者さんの訴えも良く聞いて手術適応について検討しています。
今回写真を載せた方は、術前も術後も視力は1.2ですが、とても見やすくなったという事で喜んでいただけました。術前に視力が1.2もある方は大抵手術をしない方向でお話をしますが、この方では「この白内障であれば生活に困っていそう」「手術をして喜んでもらえそう」と判断しました。