白内障手術でつくる傷と乱視
2013.11.25 白内障
今日は白内障手術9件(うち入院2件)
霰粒腫切除術1件
無事に終わりました。
眼科ケア12月号に当院が載りました。
http://www.medica.co.jp/catalog/m/4911
眼科ケアは眼科従事者のための情報誌です。当院を紹介する記事が2ページ載りました。とても良くできているのですが、ここでお見せできないのが残念です。
今回は、白内障手術でつくる傷と乱視の話です。
以前乱視のお話をしましたので、乱視についてはそちらを参考にしてください。
(乱視について)https:/moriyaganka.com/blog/20960821.html
(乱視用眼内レンズ)https:/moriyaganka.com/blog/21216620.html
白内障手術は眼の中の手術ですから、傷を作る必要があります。以前は6ミリという幅で傷を作っていたのですが、最近は2ミリ台で手術ができるようになりました。傷の幅が狭くなると、傷の回復が早いということもありますが、それ以上に「乱視が少ない」ということが重要です。
光は密度の違うところを通過すると曲がるという性質があるので、角膜の表面で最も光が曲がります。ですから、折角白内障手術で白内障を綺麗にしても、角膜の形を歪めてしまったら、視力がさがることにつながってしまうのです。以前6ミリの幅で傷を作っていた時は、手術後に糸で縫っていました。すると、角膜の形が少し歪んだだけで、大きな乱視が生じていました。
現在は傷が小さいので、基本的に縫わないのですが、それでも乱視が生じます。手術でつけた傷の部分は、やや平らになるのです。下の写真は手術前後での角膜の形を示しています。
右の「参照マップ」が手術前の角膜の形です。膜表面のカーブの強さによって、色分けされています。赤色系になるほどカーブが強く、青色系になるほどカーブが弱いということを示しています。参照マップで全体的に同じ色(青~緑)になっているということは、乱視が少ないということを示しています。左の「現行マップ」は手術後の角膜の形ですが、手術前とほとんど変わりません。この症例では、白内障手術で乱視があまり出なかったということを示しています。
下の写真は、手術で付けた傷で乱視を減らした例です。角術前では、縦方向に黄色くなっています。これは直乱視があることを示しています。術後の結果を見てもあまりはっきりしませんが、差をとってみると上方向が青くなっていて、直乱視がへるようになっていることが分かります。
白内障手術で乱視がどのくらい出るのかは、多くの要素で決まるので一概には言えません。傷の大きさが小さい方が乱視が出にくいのですが、それだけではなくて、傷に負担の少ない丁寧な手術をしているかどうかも影響します(白内障を砕くためのエネルギーで角膜がふやけてしまうと、乱視が生じてしまうのです)。
手術後でのメガネ依存度をなるべく減らすように、当院では乱視用レンズを使っています。そのため、手術で作る傷によって生じる乱視も計算に入れて、乱視用レンズの度数を決めます。