OCTによる緑内障診療
2012.12.27 緑内障
いよいよ明日で今年の診療も終わりです。
先日、ついに当院の患者番号が1000番をこしました。100番ごとにたどってみると、12月は2週間と少しで100番が過ぎていました。徐々に初診患者数が増えているようです。これからも質の良い診療を心がけますので、よろしくお願いいたします。
当ブログも今年はこれで終わりです。来年もよろしくお願いいたします。
OCTによる緑内障診療
前回の続きのお話です。OCTは網膜の厚みを数字で示すことができる器械です。
緑内障は神経が傷む病気ですから、緑内障が進行するとともに網膜が薄くなっていきます。しかし、網膜が全体的に薄くなっていくのではなくて、ある法則に従って薄くなっていきます。
上は網膜の模式図です。青矢印の視神経乳頭と言われるところから網膜の血管が出入りしていますが、それと同じように網膜の神経線維も通っています。
同じく、青矢印は視神経乳頭です。緑内障の場合はこの神経線維が痛むので、網膜が薄くなるのも神経線維毎に生じます。下の写真はOCTで撮った画像になります(右眼のデータなので、上のイラストとは左右逆になります)。
画面左上、「正常眼データベース」と書いてありますが、これは視神経乳頭周囲の網膜の厚みが正常と比べて薄くなっているかどうかを判定したものです。視神経乳頭の下方や左上の方で薄くなっているのがわかります。「Clock Hour」とあるのが、視神経乳頭周囲でそれぞれの方向での網膜の厚みを表しています。緑内障の場合、まず視神経乳頭の上方や下方から薄くなることが多いので、初期の緑内障判定に有用です。
また、図の左側(耳側)の網膜が薄くなると、黄斑と呼ばれる大事な部分が傷むことがあり、視力低下の原因になります。そのため、この部分が薄くなるかどうかは注意して診る必要があります。
緑内障では、視野が欠ける前にまず網膜が薄くなると言われています。そのため、視野異常が出ていなくてもOCTで緑内障かどうかをある程度判断することができます。 通常の診療では、緑内障の程度を調べるためにはC/D比というものを調べています。視神経乳頭の大きさと視神経乳頭の窪みの大きさを比で表したものです。 ここまで正確に記録が残っていれば、1年後や5年後、10年後と比較して、緑内障が進行しているかどうかをかなり正確に判断できると思います。 OCTを緑内障で活用するのはまだ最近始まったばかりで、現在データを集めて検証している段階ですが、以前の緑内障診療とはガラッと変わりました。
以前記事を書いたので、参考までに。https:/moriyaganka.com/blog/17581954.html
カルテにはC/D比がいくつとカルテに記載するのですが、この比率は定規やコンパスで計測したものでないため、精度に劣る感じが否めません。そのため、前回0.6だった人が今回0.7だとしても、それは急に緑内障が進行したということは言えませんでした。今回紹介したOCTは、網膜の厚みを数値化するため、網膜が薄くなっているかどうかを高い精度で調べることができます。実際に、上の写真ではC/D比(水平)0.70で、下2ケタまで表示されています。
白内障の手術はいつしたら良いのか
2012.12.20 白内障
先日乱視用眼内レンズを使用した患者さんですが、裸眼視力(メガネなし)で視力1.0がでていました。手術で良い結果がでると、とても嬉しくなります。
また、当院の白内障手術は乱視の減る「強主経線切開」を行っていますが、これも乱視が減る良い方法です。これも後ほど説明したいと思います。
白内障の手術はいつしたら良いのか
外来をしていてよく聞く質問があります。
「私はいつごろ白内障手術したら良いのでしょうか?」という質問です。同年代のご近所さんが白内障の手術をすると「私もそろそろかしら?」と思うようです。
結論から言うと、白内障の手術をするべき時期は人それぞれです。患者さんそれぞれの生活スタイル次第で必要な視力は大きく異なります。そのため、私は手術すべきかどうかは外来でよく話し合って決めています。
白内障の手術のタイミングで難しいのは、白内障が慢性疾患だということです。もちろん、急に進むタイプの白内障もあるのですが、大抵は若い頃から徐々に進行してきます。ゆっくり視力が低下した場合、自覚症状が全くないこともよくあります。視力が0.2くらいでも「よく見えている!」と言い張るかたも時々いらっしゃいます。
いつ手術をしたらいいのか、迷っている場合は視力検査の結果を参考にしても良いかもしれません。視力が1.0以上出ていれば、あまり手術は必要ないでしょう。視力が0.8より下回っていれば、正常の人よりも少し見えにくくなっていると思います。運転したり、細かい作業をする方は手術を考えても良いかもしれません。
以前紹介した、核白内障の場合、あまりに進行しすぎると手術しにくくなることがあります。超音波で核を破砕するときに必要なエネルギーが多くなるため、目の負担も大きくなります。この様な方は早めの手術を勧めることがあります。
緑内障や糖尿病網膜症など、他の目の病気を抱えている方は、白内障が検査の邪魔になってきた場合にも手術を考えて良いと思います。糖尿病網膜症では、点状出血や新生血管など、細かな変化を診察する必要があるので、あまりに白内障が進んでいると診察しにくくなってきます。また、緑内障の場合は、白内障のせいで視野検査も難しくなることがあります。緑内障の1つの形態である閉塞遇角緑内障の場合は、白内障の進行で緑内障が悪化することもあるので、早いタイミングでの手術が必要になることがあります。
目の手術は怖いと思うかもしれませんが、数分で終わる治療なので安心して手術を受けていただければと思います。小山市 結城市 筑西市 栃木市 下野市 古河市 栃木市 白内障手術 緑内障手術 もりや眼科
OCT(光干渉断層計)について
2012.12.17 緑内障
本日は手術納めでした。
白内障手術1件
眼瞼内反症手術1件
無事に終わりました。
開業して7ヶ月ですが、徐々に小山市民にもりや眼科が浸透していることを実感します。
患者さんがお友達を連れて一緒に来ていただいたこともありましたし、
駅前を見づらそうに歩いていたら、通りがかりのひとに「もりや眼科に行きなさい」と勧めてもらったという人もいらっしゃいました。来年もさらに研鑽を積んで、地域に貢献できればと思います。
もりや眼科 平成24年 治療実績
(H24年7月~H24年12月)
・観血的手術 合計 97眼
・白内障手術 81件
・網膜硝子体手術 7件
・眼瞼(まぶた)の手術 7件
・結膜の手術 2件(翼状片)
・レーザー手術 合計 15眼
・網膜光凝固術 13件(糖尿病・網膜裂孔に対するレーザー)
・YAGレーザー 2件(後発白内障に対するレーザー)
・抗VEGF薬 硝子体注射 合計 2眼
糖尿病黄斑浮腫に対する注射(アバスチン)
来年はさらに頑張りたいと思います。
OCT(光干渉断層計)について
ここ数年で急激に眼科に普及した、OCTという装置について話したいと思います。
OCTは光を使って目の中の様子を観察する機会です。仕組みは超音波エコーと似ています。
超音波エコーの仕組みですが、プローブから超音波が出て、モノに当たって跳ね返ってくる超音波を受信します。超音波が出てから帰ってくるまでの時間を測る事でモノまでの距離が分かります。
OCTでは、モノに対して光を放ち、それが反射して帰って来るまでの時間を測ります。光は超音波と違って、透明でないものは計測できません。しかし、目は角膜・水晶体・硝子体が透明なので、眼底を検査することができるのです。OCTは超音波よりも精度や情報量が多いという特徴があります。
OCTの登場で、網膜(カメラでいうフィルム)の様子を詳細に観察することができるようになりました。
たとえば、下の写真は黄斑浮腫の患者さんです。
左下の赤丸の部分を見ると、中央部分(黄斑)がむくんで、分厚くなっているのが分かります。その上の図、青矢印をみると、分厚くなっている部分は赤や白で表示されているのが分かります。また、右上の赤矢印をみると、網膜の厚みが635μmであることも分かります。
今までの通常の診察では「黄斑が浮腫で厚くなっている」くらいしか分からなかったのが、正確に635μmむくんでいるというのが分かるのです。
ちなみに、先ほどの患者さんが次に来院した時のOCTが下の図です。
字が小さくて申し訳ありませんが、前回635μmだったのが602μmに減っています。また、左の図の白い部分(むくんで分厚くなっている部分)が少し減っていることが分かります。ここまでわずかな変化は従来の診察ではわかりませんでした。
緑内障でも、進行とともに網膜の厚みが減っていくことがわかっています。
そのため、OCTを緑内障の診療に用いることで、より詳細な診療を行えるようになってきました。次回これについてお話をしようと思います。小山市 結城市 筑西市 栃木市 下野市 古河市 栃木市 白内障手術 緑内障手術 もりや眼科
乱視を治す白内障眼内レンズ
2012.12.13 白内障
もう年末が近いということで、昨日は院内の大掃除を行いました。
当院は床が白いので靴の跡がつくのが気になっていたのですが、ダスキンに頼んだらすっかり綺麗でピカピカにしてくれました。開業当初は自力でワックスをかけたのですが、仕上がりが全然違いました。
来週の手術が無事に終われば、年を越すことができそうです。
乱視を治す白内障眼内レンズ
先週の乱視の話の続きです。
軽くおさらいをすると、正乱視は目のゆがみが原因なので、直すためには円柱レンズが必要ということでした。
乱視の程度に明確な基準は無いようですが、
1D(ジオプター)以下 軽い乱視(乱視を矯正しなくても、ある程度の視力が見込まれる)
1D-2D 中くらいの乱視
2D以上 乱視が強い
という感じでしょうか。
白内障手術で使用する乱視用レンズは、通常のレンズに円柱レンズが組み込まれています。そのため、正乱視を軽減することができるのです。しかし、このレンズは正乱視のある人すべてに使えるわけではありません。
目の中には(角膜:青矢印)と(水晶体:赤矢印)の2枚のレンズあります。白内障手術では、水晶体を取ってしまいます。そのため、水晶体だけに乱視があったとしても乱視用レンズは使わなくても良いのです。
白内障手術で乱視用レンズを使うかどうかは、角膜の乱視の程度を見て判断します。
これは私の右目の角膜のデータです。実は、私は強い直乱視があります。
弱主とは、弱主経線です。角膜の6度方向では、41.82D(ジオプター)の屈折力があります。強主は、強主経線です。角膜の96度方向では、45.30Dの屈折力があります。
強主経線と弱主経線での屈折力の差が乱視の度数になります。私は45.30-41.82=3.48Dという強い乱視があることがわかります。
6度方向(ほぼ水平)の屈折力が弱い(角膜のカーブがゆるい)、96度方向(ほぼ垂直)の屈折が強い(カーブがきつい)ということは、下の図のように横長の角膜であることがわかります。
もともと私は細い目をしているのですが、角膜が横長だから目が細いのかな・・・・
この乱視を治すためのレンズが円柱レンズです。ここ数年で発売されました。こんなに良いレンズなのに、なんでもっと早く発売されなかったのか、と思うくらいです。
患者データ(これは私のデータですが)を入力すると、レンズの種類と、角度が計算されます。今回、もし私が白内障手術をするとすれば、97度の方向でレンズを固定すれば良いことになります。
もともと乱視がある人でも、乱視が減少することで裸眼視力(メガネなしでの視力)が期待できます。メガネなしで車の運転できる(視力0.7以上)と、とても嬉しいですね。当院では、術前検査で角膜乱視が強くて、乱視用レンズの適応がある患者さんにはこのレンズを用いております。
実際には乱視用レンズはレンズ代が通常の数倍もするのですが、患者さんの負担金額には変わりはありません。当院は、国が定めた白内障手術費用の中からレンズ代を出すので、高いレンズを使うと赤字になってしまいます。でも、患者さんに最善の医療をすることが、最終的には当院のためにもなるかと思ってこのレンズを使っています。小山市 結城市 筑西市 栃木市 下野市 古河市 栃木市 白内障手術 緑内障手術 もりや眼科
緑内障患者が日常で気をつけること
2012.12.10 緑内障
白内障手術2件
翼状片手術1件
眼瞼内反症手術1件
すべて無事に終わりました。
白内障手術は、乱視用レンズを用いたので、翌日の乱視がどれだけ減っているか楽しみです。
緑内障患者が日常で気をつけること
緑内障は眼科の中でもとても良く知られている病気で、かつ失明につながることもあります。そのせいか、「あなたは緑内障ですよ」と言われるとショックを受ける方が多いとおもいます。
それに対して、治療方法はとても地味で、一日数回の点眼薬をつけるだけ。薬によっては1日1回しか点眼をしない場合もあります。そのせいか、外来では良く「日常で気をつけることはありませんか?」とよく聞かれます。
現在、緑内障に対してエビデンス(研究で証明されている)のある治療方法は眼圧を下げることだけと言っても良いくらいです。そのため、普段の食生活や運動などの生活習慣が緑内障を予防したという報告はまだありません。ですから、我々眼科医は「点眼だけしっかりやってくれればいいですよ」と言うのですが、折角なので色々調べてみました。
適度な運動は眼圧を下げる
ある報告では、ジョギングをすると眼圧が約5mmHg下がったという報告があります。ですから、適度な運動をすると緑内障が進行しにくいかもしれません。
脱水状態で眼圧がさがる(効果は一時的です)
目の中はほとんど水でできていますので、体内の水分が減ると眼圧も下がります。先ほどのジョギングも、もしかしたらある程度の脱水が関係していたかもしれません。実は、飲酒はかなりの脱水作用があります。そのため、飲酒後もかなり眼圧が下がっているのです。
緑内障発作の患者さんに対して治療薬がなかった時代、スコッチを飲ませて対応した時代もあったそうです。(ただし、脱水状態は体にとってはかなり負担なことで、かつ眼圧を下げる時間はごく短いので緑内障治療として飲酒はしないでください)
水を大量に一気飲みすると眼圧が上がる
先ほどとは逆の状態です。普通に飲む分には影響はありません。
ネクタイを締めすぎても眼圧が上がる
あまりネクタイを締めすぎるとうっ血して眼圧が上がるようです。ただ、普通にネクタイをしている分には問題ありません。
うつむいていても眼圧があがる
少し説明しにくいですが、うつむくと水晶体が瞳孔を塞ぎやすくなって眼圧が上がるようです。
寝ると眼圧が上がる
最近この話は学会などでも話題になります。普段頭は高い位置にあるのが、寝たとたん体と同じ高さになるので、眼圧が上がるということです。ですから、眼科によっては、24時間眼圧と言って昼も夜も眼圧を測ることもあります。夜間に眼圧が上がっていれば、その時間に効くように点眼薬を付ける時間を工夫することもあります。私はこれを聞いて「そのうち立って寝る緑内障患者が出るのではないか?」と思っています。(緑内障患者さんはこれを読んでも、立って寝ないでください)
健康食品は基本的に無効
巷ではブルーベリーやカシスが目に良いと言われていますが、実際に目の病気の何かに効果があったという科学的な報告はありません。健康食品に緑内障治療効果が全くないかはわかりませんが、少なくとも現在使用されている緑内障薬と比較して極めて弱い作用しかないと思います。健康食品は「気休め」程度のものだと考えた方が良いと思います。
あまり神経質になりすぎない
今まで色々言いましたが、やっぱり日常生活ではあまり気をつけなくても良いと思います。
点眼だけしっかりして頂ければ、それ以上できることは無いと言っても良いと思います。
何となく緑内障は「細かい事を気にする」方が多い印象です。もしかすると、ストレスや悩みなどが緑内障を悪化させる一因なのかもしれません。
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