緑内障発作(急性閉塞隅角緑内障)が生じるしくみ
2012.09.27 緑内障
来月、10月に日本臨床眼科学会という、大きな学会があります。それに参加させていただくため、26日(金)、27日(土)は休診させていただきます。大変申し訳ありません。
ここで、最新の知見を入手して、診療に反映させたいと思います。
緑内障発作(急性閉塞隅角緑内障)が生じるしくみ
今回は緑内障の発作について説明したいと思います。
眼科で夜中に呼ばれる病気というのはあまり多くありません。たとえ寝ている間に物が見えなくなっても、目を閉じれば気がつかないからかもしれません。しかし、緑内障発作は激痛を伴うので夜間でも駆け込んで来ることがあります。
緑内障発作を簡単に説明すると、目の中の水(房水)の出口(隅角)が詰まることで、眼圧が急上昇することです。眼圧が急上昇すると、頭痛、嘔吐とともに、殆ど見えなくなります。時間とともに視神経が傷み、最悪の場合失明に至ります。
下で、赤い矢印が房水の出口(隅角)です。
しかし、年齢とともに、白内障が進行すると、虹彩が後ろから押される形になります。
虹彩が押されると、隅角が閉じることがあります。隅角が閉じてしまうと、房水の出口がなくなり、結果として眼圧が急上昇します。
下は診察用顕微鏡の写真です。隅角が広い人は房水のスペース(赤矢印)が広いのですが、隅角が狭い人は、このスペースが殆どありません。
下の写真は隅角がとても狭い症例です。上の赤矢印の部分が殆どありません。
この様な場合、隅角が狭いことで眼圧が上昇することもありますし、先ほど説明した緑内障発作が生じる原因にもなります。そこで、房水の通り道を別に作成するという治療を行う場合があります。それについては次回説明したいと思います。
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ジオプターについて
2012.09.24 白内障
ジオプターについて
一般的に眼科で視力を測る時にはレンズで矯正します。当然レンズは色々な度数があるのですが、その単位がジオプターです。ジオプターの説明は難しいのですが、これがわかると白内障手術の理解がより深まります。
ジオプターは、ピントが合う最も遠い距離で計算します。レフケラトメーターという機械で計測できますが、簡単な方法としては遠くにあるものを見ながら徐々に近づいてピントがあう距離を調べます。
その距離からジオプターを算出します。計算には下の式を用います。
ピントが合う最も遠い距離が20cmのときは-5D、50cmのときは-2D、1mのときは-1Dということになります。無限の遠くが見えるときは0Dです。
ここまでが分かっていると、術後の見え方がわかるようになります。これについては次回説明したいと思います。
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緑内障の手術について(選択的レーザー繊維柱帯形成術:SLTレーザー)
2012.09.20 緑内障
先日、緑内障のSLTレーザー治療について「どんな治療なのでしょうか?」という質問がありました。折角の機会なので、今回のテーマにしたいと思います。
当院ではここまでできますよ、という紹介になればと思います。
緑内障の手術について(選択的レーザー繊維柱帯形成術:SLTレーザー)
以前、目の中における水(房水)のめぐり方について説明させていただきました。おさらいをすると、房水は下の写真の矢印の部分から出ていきます。ここは「繊維柱帯」といって、メッシュ状の構造をしています。房水はここを通過するときに抵抗があります。
今回紹介するSLTレーザー(Selective Laser Trabeculoplasty : SLT)は、房水が繊維柱帯を通過しやすくなることで眼圧を下げる治療です。SLTレーザーはメラニン色素に良く吸収されるようにできているので、周囲の組織をあまり破壊しないで、繊維柱帯に吸収されるようにできています。SLTレーザーが繊維柱帯に吸収されると、熱凝固を起こします。その際に、繊維柱帯が縮むため、結果として防水が流れやすくなります。
上の図は繊維柱帯の模式図です。繊維柱帯(黒い部分)の隙間(白い部分)を房水の通ります。左の図はレーザーする前です。レーザーで繊維柱帯が細くなると、その分房水の通り道が広がります(右図)。
治療時間は5分程度です。痛みは殆どありません。この治療の特徴は、患者さんの身体的負担がとても少ないことにあります。SLT治療を受けた患者さんは、当日から普段と変わらない生活ができます。これは、他の手術である繊維柱帯切除術など手術が身体的負担が大きいのと比べると異なります。
術後一時的に眼圧が上がることがあり、点眼や内服薬で対応することがあります。大抵の場合、1週間程度すると眼圧が落ち着いてきます。
治療効果ですが、一般的には眼圧を3から5mmHg程度下げます。ただし、無効である場合もあって、3割程度が効果がはっきりしません。また、時間とともに眼圧を下げる効果が減ることもあります。
緑内障の点眼を減らしたい、または点眼を使ってもなかなか下がりきらないという場合には、検討する価値のある治療だと思います。費用がややかかるのが難点です。片眼につき1割負担で1万円弱、3割負担で3万円弱になります。当院では最新型のellex社のSLTを使用しております。
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白内障はいつから生じる?
2012.09.17 白内障
白内障はいつから生じる?
外来をやっているとよく聞かれることがあります。
「私は白内障があるのでしょうか?」
70歳に近くなると、周囲で白内障手術をする人が増えるので、ご近所同士で白内障手術の話題がでるのだと思います。
しかし、実際には白内障自体は20代位から少しずつ出てきているのです。ですから、60、70代のを診察すると、間違いなく全ての方に白内障がある、ということになります。
下の写真、左は中学生の方の水晶体です。水晶体の核は全く黄色くなっていません。また、核が透明なため、どこが核なのかもはっきり見えません。
それに対して、右は70歳の方の白内障です。どこに水晶体の核があるか、よくわかります。また、奥の方が黄色っぽくなっているのもわかります。
(核については以前のブロクを参考にしてください)
ただ、実際には、「あなたは白内障がありますよ」と言うとかなりショックを受けるかたもいらっしゃいます。もちろん白内障で視力が下がっていたり、手術が必要な方にはそう伝えなくてはなりません。
しかし、白内障が軽度で視力がとても良い場合は「病気」としてみなす程ではないと考えられます。ですから、「あなたは白内障はありませんよ」とお伝えすることにしています。
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視神経を診察する
2012.09.13 緑内障
最近、「知り合いから紹介されて来た」という方が増えて来ました。私としてはとても嬉しい限りです。今後も患者さんに満足していただけるよう、精進していきたいと思います。
視神経を診察する
今までのブログで、緑内障が進行すると視野が狭くなることや、緑内障の進行には眼圧が重要であることをお話しました。では、なぜ緑内障で視野が狭くなるかというと、「視神経がダメージを受けるから」です。緑内障は別名「緑内障性視神経症」とも言われており、実は神経の病気なのです。
ですから、緑内障患者さんの診療では視神経の診察が必須です。当院で初診の方はまず視神経の診察から始まります。視神経の診察のためには、眼底検査を行います。
これが眼底です。目の中を診察するとこのように見えます。緑の矢印の部分は「視神経乳頭」と言います。視神経の元気そうな方(緑内障でない人)は下の写真のような形をしています。
ピンクの矢印が視神経です。ここの厚みがしっかりあれば、視神経は「元気」ということです。
ところが、緑内障などで視神経が傷むとピンクの部分が薄くなっていきます。
下の写真は末期の緑内障の方の視神経乳頭です。視神経に相当する部分(ピンクの矢印)が殆どありません。緑内障が完全に進行してしまった人は、この視神経がぺちゃんこになってしまいます。
緑内障の診療では、視神経の形の変化を追っていく必要があります。神経の厚みの変化は非常に微細なので、定期的に眼底写真を撮って、比較することが大事だと思います。
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